「美へのこだわりというより他者からの承認」湊かなえ「ルッキズム」を語る[文庫ベストセラー]

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 1月24日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文庫第1位は『カケラ』が獲得した。
 第2位は『荒ぶるや 空也十番勝負(九)』。第3位は『不可能な過去 警視庁追跡捜査係』となった。

 1位に初登場の『カケラ』は湊かなえさんが美容をテーマに描いた心理ミステリー。美容整形やダイエット、筋トレなど、容姿をめぐる問題に翻弄される人物が多数登場し、彼・彼女らの証言からドーナツに囲まれて亡くなった少女の謎が浮かび上がってくる。容姿に囚われるルッキズムが氾濫する現代において、美とはなにか、幸せとはなにかを問い直す一作となっている。

 湊さんは2020年の単行本発売時のインタビューで「見た目」についてこう語っている。《みんなが求めているのは、美へのこだわりというよりは、他者からの承認なのかなと思うんですよね。外見を求める根底にあるのは承認欲求ではないかと。第一章の志保のエピソードには、実は私自身のことがけっこう入っていて、実際に小説家になってから十キロ以上太ったんですよ。でも、当時そのことを私自身はあまり気にしていなかったんです。なぜかというと、きっと自分の書いた小説を面白いと言ってくださる方がいて、外見とは違うところで認めてもらえているという満足感があったからだと思います。
 何か一つ人から認めてもらえるものがあれば、見た目のことを気にしなくて済むんじゃないでしょうか。外見を気にしている人の話を聞いてもどかしいのは、足りないのは外見じゃないんじゃないかなと思っても、それを直接伝えるのが難しいことですね。》人は外見がよくなれば幸せになれるのか? 現代の風潮に一石を投じる物語となっている。

1位『カケラ』湊かなえ[著](集英社)

美容外科医の橘久乃は幼馴染みの志保から「痩せたい」という相談を受ける。カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。有羽を追いつめたものは果たしていったい??。周囲の目と自意識によって作られる評価の恐ろしさを描くミステリー長編。(集英社ウェブサイトより)

2位『荒ぶるや 空也十番勝負(九)』佐伯泰英[著](文藝春秋)

祇園での予期せぬ出会い。そして、薩摩最後の刺客!京の都。祇園感神院の西ノ御門前で空也は、往来の華やかさに圧倒されていた。法被を着た白髪髷の古老が空也の長身に目をつけ、ある提案を持ちかける。姥捨の郷では眉月や霧子たちが空也の到着を待ちわび、遠く江戸の神保小路で母おこんや父磐音がその動向を案じる中、空也の武者修行は思わぬ展開を迎えることになる。そこへ、薩摩に縁がある武芸者の影が忍び寄り……。(文藝春秋ウェブサイトより)

3位『不可能な過去 警視庁追跡捜査係』堂場瞬一[著](角川春樹事務所)

「一事不再理」。刑事裁判で判決が確定した人間は、同じ事件で二度裁かれることはないという原則だ。その無罪を勝ち得た被告から、裁判の十年後、当時の担当刑事に手紙が届いた。「あの事件の犯人は、本当は私でした」と。相談を受けた追跡捜査係の沖田は、被告の足跡を辿り始めるが……。一方、神奈川県警に新設される追跡捜査班のアドバイザーとして招かれた西川は、ある未解決事件が気になっていた。二つの不審な事件がぶつかる時、複雑に絡み合った謎が解き明かされる!書き下ろし長編警察小説。(角川春樹事務所ウェブサイトより)

4位『日雇い浪人生活録(十四) 金の足掻』上田秀人[著](角川春樹事務所)

5位『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件8』佐伯さん[著](SBクリエイティブ)

6位『三千円の使いかた』原田ひ香[著](中央公論新社)

7位『傲慢と善良』辻村深月[著](朝日新聞出版)

8位『かがみの孤城 上』辻村深月[著](ポプラ社)

9位『小説 すずめの戸締まり』新海誠[著](KADOKAWA)

10位『桜の下で 風烈廻り与力・青柳剣一郎』小杉健治[著](祥伝社)

〈文庫ランキング 1月24日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年1月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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