【話題の本】『隋 「流星王朝」の光芒』平田陽一郎著

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■短命な大帝国の通史がヒット

後漢末から400年近く続いた中国の南北分裂時代を終わらせ、北方の草原から華北、江南に至る大帝国を築き上げた隋(581~618年)。たった2代で滅びたが、律令制の整備や南北を結ぶ大運河の建設など、後代への影響は大きい。

40年に満たない短命のうちに、流星のような輝きを放って消え去ったこの王朝について、北方の遊牧世界と密接に結び付いた前史から、滅亡後の混乱期に至る通史を描いたのが本書。9月下旬に初版1万3000部でスタートしてたちまち重版、現在1万8000部と快調な滑り出しだ。

担当した田中正敏・中公新書編集長は「この10年弱、中公新書では殷、周、漢帝国、南北朝時代、唐と中国歴代王朝の通史を刊行し、そのすべてが増刷しています。特に3月刊の『唐』は5刷2万3000部と好調で、そうした流れを受けて多くの方がすぐに手に取ってくださったのでは」とヒットの背景を読み解く。

暗愚とされがちな2代皇帝の煬帝について、著者は国家拡大に伴い大事業推進のためのトップダウン式を採用した結果、「暴君」化したとみる。中国文学者の高島俊男氏の著作を思わせる親しみやすい文章とシビアな人物評も楽しい。(中公新書・1100円)

磨井慎吾

産経新聞
2023年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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