【話題の本】『厨房の哲学者』脇屋友詞著 高級中国料理の舞台裏

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中国料理の著名なシェフによる自伝。生い立ちから、中華鍋を洗い続ける下積み時代を経て料理人として成功し、コロナ禍を乗り越えるまでをつづっている。

店の格を示すグランドメニューの厚さ、注文が入る前から何日も丹精込めて戻すフカヒレやナマコなどの高価な乾物、中国人の親方たちが鯉の頭や鶏のトサカを集めて作るまかない料理…といった高級中国料理店の奥深い世界が興味深い。

著者は「食神がついている」という易学者の父により、中学卒業後すぐ高級中国料理店の厨(ちゅう)房(ぼう)へ入れられた。進学できず未来の可能性を閉ざされると思い込んでいたが、下積み時代に「どこかに辿(たど)り着くためには(中略)ひとつの道を選んで、その道を歩き続けなければいけない」と気付き、中国料理を「この道」と定めた。その心の動きをていねいに書いた。

今月発売されたばかりだが、すでに3刷2万3000部を発行。幻冬舎では好評を博した要因を「夢や目標を持てなくても、まずは目の前のことと格闘する、そこから本当の人生は始まるというメッセージに説得力がある」と分析する。また、中国料理に関する教養の書としても読み応えがあるとしている。中華好きにもお薦めの一冊。(幻冬舎・1650円)

寺田理恵

産経新聞
2023年12月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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