2023年、読者が選んだ本当に面白かった一冊は? 3大ブックアワード ベスト3を全作品紹介!

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

2023年も残すところあと1週間を切りました。今年もたくさんの本が生まれ、読まれました。公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所の統計によると、1年間で出版されている文芸書は、なんと約12000点にものぼるそうです。年末を迎え、そんな12000点の中からさまざまな媒体で「今年を代表する本」のランキングが発表されていますが、なかでも「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2023」「読書メーター OF THE YEAR 2023-2024」「2023年ブクログ年間ランキング」の3つのランキングは、読者が本当に興味を惹かれた本が選出されるブックアワードです。本好きが選んだトップ3作品をまとめて紹介します!

・ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2023 小説部門
本とコミックの娯楽マガジン「ダ・ヴィンチ」が主催するブックランキング。全国の本好きが「今年いちばん良かった本」を選ぶ、非・売上のランキング。

第1位 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著]
第2位 『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光[著]
第3位 『君のクイズ』小川哲[著]

・読書メーター OF THE YEAR 2023-2024
日本最大級の読書コミュニティー「読書メーター」が選出した候補作20作から本好きのユーザーによる投票で決定した年間おすすめ本ランキング。

第1位 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著]
第2位 『月の立つ林で』青山美智子[著]
第3位 『この夏の星を見る』辻村深月[著]

・2023年 ブクログ年間ランキング
新しい本に出会えるブックレビューサイト「ブクログ」ユーザーの本棚登録数・評価を元にした年間ランキング。

第1位 『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光[著]
第2位 『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ[著]
第3位 『正欲』朝井リョウ[著]

■「ダ・ヴィンチ」1位、「読書メーター」1位
『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著](新潮社)

第20回「女による女のためのR-18文学賞」で史上初の「三冠」を獲得した宮島未奈さんのデビュー作。地元唯一の百貨店が閉店するまでの1ヶ月に毎日、地元ニュースの中継に映り込むと宣言したかと思えば、幼なじみを巻き込んで唐突にM-1挑戦を決行、はたまた実験のために坊主頭にし、200歳まで生きると堂々と宣言する女子中学生・成瀬あかりの爆走生活を描いた青春小説だ。3月に発売されると半年で発行部数は10万部を突破した。2024年1月には続編『成瀬は信じた道をいく』の発売が予定されている。

読書メーターには《本読みながらこんなにワクワクしたのいつ以来だろう。成瀬あかり、令和最強のヒロイン爆誕!青春のいとおしさが詰まった笑いと涙溢れる本。推します!》(読書メーターユーザー・もぐもぐさん)などの声が投稿されている。俳優で作家の中江有里さんは主人公の成瀬を《「空気を読まない変わった子」と思われるかもしれない。しかし成瀬は空気を読まないのではなく、攪拌して新たな流れを作る存在だ。》と評し、《人生という大きな山に、小さな足場を見つけて一歩一歩登るような日常。前に行くことを諦めなければきっと今より高みへたどり着ける。青春のまぶしさ、尊さが胸を突き抜けた。》と読後感を綴っている。

■「ダ・ヴィンチ」2位、「ブクログ」1位
『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光[著](新潮社)

死去したミステリ作家が残した遺稿をその息子が探す物語。同作には紙の書籍でしか実現できない、ある仕掛けが施されていることで話題となった。その鮮烈な読書体験がクチコミを中心に広がり、10代から20代の読者から往年のミステリ好きにまで幅広く支持された一冊。累計発行部数は35万部を突破している。著者はライトノベルやライト文芸で活躍する杉井光さん。

ブクログには《ひゃーーーーー 分かった瞬間鳥肌立ちましたわ。 凄いっ!!!》(ブクログユーザー・bmakiさん)などの1400件ちかい驚きの声が投稿されている。小説紹介クリエイターのけんご@小説紹介さんは同書について《推薦コメントなんて、何一つ思い浮かばなかった》とコメントを悩みつつも《小説だけにかかわらずさまざまなコンテンツが電子化する世の中において、紙であることの意義を見出し、「ページを捲る」という些細な行動に対する喜びを実感させてくれる稀有な作品》と紹介し、《紙の本だから、という仕掛けだけが優れているわけではない。むしろ、物語と洗練された文章が優れているからこそ、結末と仕掛けの衝撃が際立つのだろう。》と評している。

■「ダ・ヴィンチ」3位
『君のクイズ』小川哲[著](朝日新聞出版)

賞金1000万円がかかったクイズ番組の決勝で、有名なクイズプレーヤーが問題が読み上げられる前にボタンを押し、正解を答え優勝した。敗者となった主人公が「なぜ正解できたのか?」その謎に挑む物語。著者は今年1月に『地図と拳』(集英社)で第168回直木賞を受賞した小川哲さん。年末恒例のミステリランキング『このミステリーがすごい! 2024年版』(宝島社)でも国内編7位にランクインしている。

ダ・ヴィンチではライターのすずきたけしさんが《クイズという競技小説にこれほど人間味を内包させた結末に驚きを禁じ得ない。そしてその論理的な帰結に読者は圧倒されるのである。》と紹介。《極限までシンプルで純粋な競技である「クイズ」と同じく、『君のクイズ』は無駄のない、純粋なエンターテインメントなのである。ただただ見事というほかない》と評している。書評家の村上貴史さんは《謎の設定こそ不条理めいて見えるが、推理の過程も三島が到達した結論も極めて真っ当だ。飛び道具も魔球も使っていない。これがまず嬉しい。しかも、三島の謎解きを通じて、彼自身の、そして本庄の人間性や、それが形成される過程も見えてきて、小説としての愉しみも味わえる。充実した小品だ》と評している。

■「読書メーター」2位
『月の立つ林で』青山美智子[著](ポプラ社)

月について語るある男性のポッドキャスト番組のリスナーたち5人の人生を描いたオムニバス短編集。仕掛けられた見えないつながりが胸を打つ心温まる作品。著者の青山美智子さんは2021年『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)、22年『赤と青とエスキース』(PHP研究所)、23年が同作と、3年連続で本屋大賞にランクインする人気の作家。

読書メーターには《何処にいるのか分からない。進むべき方向が見えない。一歩も前に進めない。そんな闇夜に月が明かりを灯し、道標を示すような素敵な内容だった。》(読書メーターユーザー・シャコタンブルーさん)、《人と人との関係性、孤独と感じがちな「距離感」について、柔軟で肯定的な捉え方を後押ししてくれる本。》(読書メーターユーザー・ガジュマルさん)などのレビューが投稿されている。

■「読書メーター」3位
『この夏の星を見る』辻村深月[著](KADOKAWA)

コロナ禍で複雑な思いを抱える中高生たちが主人公。日本各地の天文部で活動する若者たちが困難に直面し、やりきれない思いを抱えるなか、星空を見上げることでつながりを持ち、前を向いて進みはじめる。コロナ禍でままならない思いを抱えたすべての人に贈る感動作。2021年に東京新聞夕刊で連載された作品。

読書メーターには《コロナ禍の生徒たちを、ただ「かわいそう」と思っていた自分が恥ずかしい。懸命に日々を生きた彼らを褒めたい。コロナ禍に一緒に星を見たこの夏の経験が、未来への希望のスタートになったことに目頭が熱くなった。》(読書メーターユーザー・REIさん)とのレビューが投稿されている。辻村深月さんはインタビューで《子どもたちの時間はコロナ禍だからといって止まっていたわけじゃない。子どもは常に今を生きていて、大人たちが想像するよりもずっとたくましく前を向いている。コロナが収束したとしても、大人の言う“元”の状態には戻らないし、彼らにしか切り開けない未来を歩み続けていくのだということを、今作を通じて描きたかった》と同作に込めた思いを語っている。

■「ブクログ」2位
『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ[著](中央公論新社)

タイトルになっている「52ヘルツのクジラ」とは他のクジラには聞こえない周波数の声で鳴く「世界一孤独なクジラ」のこと。物語は孤独な女性と口がきけない少年が出会うことで始まる。二人が追い込まれた理由や複雑な過去が紐解かれつつ、新しい人生を切り拓いていく感動物語となっている。2021年本屋大賞を受賞した作品で今年5月に文庫化された。また8月に杉咲花さん主演の映画化決定の一報が流れ注目が集まった。

ブクログには《私の大事な人が叫んでる声、私はちゃんと聞けてるのかな? 人は絶対に1人じゃない、自分では気がつかなくても誰か必ず自分の声が届く人がいるはず。今は出会っていない人かもしれない。それを教わりました。》(ブクログユーザー・はるおさん)など多く共感の声が書き込まれている。書評家の石井千湖さんは主人公の過去が明かされる経緯を記しながら《すべての謎が解けたとき、あまりにも悲痛な愛の形が浮き彫りになる。》と紹介し、《愛を注ぎ、注がれる関係は、まずお互いの話を聴くことからはじまると教えてくれる一冊》と評している。

■「ブクログ」3位
『正欲』朝井リョウ[著](新潮社)

著者の朝井リョウさんの〈あらすじを簡単に書きたくない、作家が作った爆弾をそのまま、受け止めてほしい……〉との想いから、内容の公表は控えられている同作。同作の出版元の新潮社の紹介には《自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。》こんな言葉が引かれている。2021年に第34回柴田錬三郎賞を受賞。2023年11月10日より稲垣吾郎さん、新垣結衣さんらが出演する映画版が公開され話題となった。

ブクログには《すごい強烈な本…何書いたらいいんだろう… 何を言っても全部綺麗事になりそうで書けない。》(ブクログユーザー・みたらし娘さん)、《自分の考えの未熟さとか浅ましさをちょっとマシにしてくれてありがとう、という気持ちになりました。 出会えてよかった本です。》(ブクログユーザー・さといもおいもさん)、など作品への感想が3000件以上も書き込まれている。

Book Bang編集部
2023年12月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク