【児童書】まばゆい子供たちの絵 『かんこうさんがふってきて』大阪市立豊崎小学校の子どもたち作

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【児童書】まばゆい子供たちの絵 『かんこうさんがふってきて』大阪市立豊崎小学校の子どもたち作

[レビュアー] 桑原聡(産経新聞社 文化部編集委員)

 大阪市立豊崎小学校に通うとしおが同級生の3人組にいじめられていると、いきなり雷まじりの猛烈な雨が降り始め、雷さんが落ちてきた。雷さんの正体は罪を着せられて大宰府に流された菅原道真(菅公)。恨みのために鬼に姿が変わってしまったのだ。

 理不尽ないじめにあっているとしおが「ぼくも鬼になってしまいたい」と鬼に打ち明けると、鬼は「君も同じようにつらい目にあっているんだね」と言い、いつのまにか菅公さんの姿に戻っていた。意気投合したふたりが大阪の街をめぐって人々と触れ合ううちに菅公さんの荒ぶる心は徐々に静まり、としおの心も穏やかになってゆく。最後の場面は天神祭の夜。花火の光の中には菅公さんの満足そうな顔が浮かんでいた。

 菅公の怨念を主題にした能楽「雷電」を、怨念からの解放に書き換えて作られた本書は、絵本作家の田島征彦の指導のもと、豊崎小学校の全児童155人によって描かれたという。どのページの絵もエネルギーに満ちあふれ、まばゆい輝きを放っている。(くもん出版・1500円+税)

 桑原聡

産経新聞
2016年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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