<東北の本棚>愛する人守る姿胸打つ

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<東北の本棚>愛する人守る姿胸打つ

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災でつらい体験をしながらも、前向きに生きようとする被災者の体験談を漫画化した。生死の際で人は何を思い、行動したのかが、リアルに伝わってくる。
 原作者は1946年宮城県丸森町生まれ。現在相模原市在住だが、中学、高校時代を陸前高田市で過ごした。
 震災を受け、居ても立ってもいられずに被災した同級生と連絡を取った。何人もが想像を絶する壮絶な体験をし、必死で生きている実情を知った。心が揺り動かされた。
 その同級生たちの魂の叫びを残しておきたいと、2012年に私家版の文集にまとめた。その後、震災を知らない子どもに命の大切さを伝えたいという思いに突き動かされ、知り合いの漫画家に依頼して本書はできた。
 愛妻を亡くしながらもひたむきに生きる人、人命救助に尽力し津波の犠牲になった会社社長、200人以上の避難者のうち11人だけが一命を取り留めた市民会館での被災談-。14の実話を漫画化している。
 阿鼻叫喚の中でも、自分のことよりも愛する人を守ろうとした人の姿などが取り上げられ、胸に迫ってくる。
 原作の朗読に取り組んでいる女優渡辺美佐子さんが、帯文をつづっている。
 幻冬舎03(5411)6222=1000円。

河北新報
2017年3月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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