緊張をどうやってほぐす? 人気ラジオDJが実践する対処法

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いい空気を一瞬でつくる

『いい空気を一瞬でつくる』

著者
秀島史香 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784023315815
発売日
2017/03/07
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

緊張をどうやってほぐす? 人気ラジオDJが実践する対処法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

DJという仕事は番組などからお呼びがかからないとできません。いつ次のクール(四半期)で「お疲れ様でした」と言われるかわからない不安。「とにかく1日でも長く番組を続かせないと! マイクの前に座り続けないと!」と、必死で考えました。

スタジオで日常で試しては失敗し、微調整してはまた試してきた、前向きになれるコツ。

「あれ!? そうか!」と見方を変えるヒント。

ラジオという大好きな場所に飛び込んで、20年。それらのおかげで、なんとか生き残っているようなものです。
(「はじめに」より)

つまり、きょうご紹介する『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』(秀島史香著、朝日新聞出版)は、人気DJである著者が、長い経験から得てきたヒントを集めたものだということ。

それらすべてを束ね、「大切なことはつまりこれだ!」とひとことでいい表すとしたら、それは「いかに相手と自分にとって”いい空気をつくる”」か、なのだそうです。場当たり的に空気を読もうとしても気疲れするだけで、誤解も生まれるもの。大切なのは、まず相手ときちんと向き合って、自分から空気をつくって見ること。小さな心がけや習慣で、「いい空気」は一瞬のうちにつくれるというのです。

そのために必要な42の法則が紹介された本書のなかから、「第3章 どんな想定外でも大丈夫! 緊急事態にも揺るがない『切り返し』の方法」を見てみましょう。

ガチガチに緊張しているとき

「緊張して、人とうまく話せない」というような悩みは、多かれ少なかれ誰にでもあるはず。でも、いくら「リラックスしましょう」といっても、それは難しいことでもあります。そこで、まずは「緊張したときの症状」を考えてみることを著者は提案しています。

たとえば「顔がこわばる」「心臓がバクバクする」「首や肩がガチガチに固まる」などがそれにあたるでしょうが、これらはすべて、体の症状。それに気づくことができれば簡単で、できることからしてみればいい。具体的には、「固まっているな」と思う部位を自分でほぐしていけばいいというのです。

著者の場合は、肩甲骨を意識して腕を前後に大きく振るストレッチをしているのだとか。気持ちが萎縮すると体も前のめりに縮こまるため、背筋を伸ばして胸を張り、腕を風車のように回しながら、肩も回す。これを30回繰り返すというのです。

まわりに人がいる状況でいきなり立ち上がってストレッチをすると「どうしたの!?」という目で見られるかもしれませんが、「どうしようどうしよう」と緊張をひとりで増幅させながらじっと座っているよりは100倍マシです。(93ページより)

動き回ったほうが血の巡りもよくなり、頭もスッキリするわけです。そして、ストレッチよりも簡単でおすすめなのが、ジャンプをすることで、著者も本番前に飛んだり跳ねたりしているといいます。人前でやるのがはばかられるなら、トイレに行ったついでにピョンピョンと20回。ストレッチからのジャンプは著者のなかでのひとつのルーティンで、毎回こなすことには、自分を落ち着かせる効果があると実感しているそうです。

さらに楽になる方法として著者が紹介しているのが、体を動かしながら自分への「期待値を下げる」こと。そもそも緊張は、「失敗したくない」=「ちゃんとやりたい」という思いから起こるもの。その目標に自分が到達できるか不安だから、胸がドキドキしたり、頭が真っ白になったり、しどろもどろになるわけです。

でも、「完璧にビシッとこなすことだけが、人を惹きつけるわけではない!」くらいの開きなおりが、いい結果に結びつく場合も多いというのです。だからこそ、「相手への期待値」も下げるべき。相手に高すぎる期待感を持つと、実際に会ったとき、相手との温度差に「こんなはずでは」と動揺してしまうからです。

相性だって影響するでしょうし、相手も緊張しているかもしれない。虫のいどころが悪い日や、体調が優れない日だってあるはず。だから、思ったほど話が弾まなかったとしても、相手への期待値を下げておく。そうすれば、「こんなものかな」と必要以上にジタバタしなくてすむという発想です。

自分をいかに「できる人」に見せようかと頭を悩ませていると、緊張しても無理はありません。しかし、「いかに相手を心地よくさせるか、和ませるか」と目の前の相手に集中すると、緊張している暇はなくなるといいます。自分と同じように相手も緊張しているのだから、まずは自分を守る鎧を脱ぐべきだという考え方です。

大切なのは、緊張を丸ごと否定しないこと。たとえ緊張して、失敗した! と自分が思っても、案外相手は気にしていないもの。「ああ、この人も人間なんだな」ぐらいに笑ってくれます。(95ページより)

そもそも緊張は自分でつくり出しているのだから、「こうすれば解ける」という解除法も自分の思い込みでつくればいいのだと著者。思い込めば、思い込んだ者勝ち。シンプルで無理なくできる「お守り」を自分なりにつくるということです。(92ページより)

相手の反応が気になって仕方がないとき

会議、プレゼン、食事会での挨拶、クラス会や町内会の挨拶、結婚式のスピーチなど、人生においては、なにかと人前で話す機会がめぐってくるもの。そんなときは、目の前にずらりと並んだ顔が自分を見ているわけですから、身震いしてしまうことだってあるでしょう。

勇気を振り絞って声を出せば、気になるのは相手の反応です。渾身のツカミのひとことを繰り出したものの、思ったよりもウケなかったり、反応が薄めだと焦ってしまいます。しかし、ここで著者は大切な事実を指摘しています。人前に出て行く際、無意識に自分でつくり出しているのは、「自分ひとり対全員」という構図だということ。それでは孤軍奮闘することになり、終始孤独で苦しいだけ。

自分が話す立場だからといって、ひとりで全部背負おうとすると、相手のことが目に入らず空回りするだけだということ。みんなで同じ場所にいるのだから、「お互いのアクションとリアクションがその場をつくり上げるもの」と考えれば、プレッシャーも軽くなるというわけです。

そこで、自分の「味方」を見つける、もしくは意識的につくりましょう。お客さんが大勢いる中を、ざっと見回してください。「ウンウン!」と聞いてくださる方、表情が豊かな方がひとりはいるはずです。まずは「しばしこの時間をあなたに捧げます!」という気持ちで、頼もしい「味方」=「聞き手役」になってもらうのです。全員に伝えようとすると、意識もエネルギーも分散してしまいます。まずはそのひとりの「味方」にしっかり語りかけてみる。そうすることで、結果的にひとりひとりにより伝わりやすくなるのです。(116ページより)

なお、ここで大切なのは、自分の体験談だけで完結しないようにすることだといいます。聞いている相手に向かって「いま、あなたのお話をしていますよ」と関連づけることで、興味を持ってもらえるというのです。

話し手の緊張は、相手に移ってしまうもの。こちらが緊張していると、相手も身構えてしまうわけです。さらに、「ここは私ががんばる! なんとかする!」と力が入りすぎると、自分にしか意識が向かず、目の前のせっかくのリアクションを読み間違えたりすることも。相手の反応は気になって仕方がないものですが、そこで、いかに自分を自由に、楽にしてあげられるかにかかっているというのです。

事実はひとつ。解釈は自由、です。
現場では、自分にとって心地よい解釈をする。この考え方を身につけると、気持ちがぐんと楽になりますし、結果的に、聞いてくださる人たちにも、よりよく伝わります。(118ページより)

その結果、「気がつけば、味方だらけだった!」という嬉しい発見をすることもあるのだとか。ぜひ、心にとどめておきたいところです。(115ページより)

J-WAVEやNHKなどで活躍している著者は、いまでも全く緊張しないということはなく、人と会うときはドキドキもするそうです。けれど、持ち前のネガティブ&記録気質を生かし、失敗をひとつずつメモしていったのだとか。そして、そのダメ出しリストが長くなっていくうちに「慣れ」というぼんやりした感覚よりも、「ひょっとして、こう考えればいいんじゃない?」という小さな気づきが浮かび上がってきたのだといいます。

それらがまとめられているだけに、本書には机上の空論とは異なる説得力があります。コミュニケーションについて悩んでいる方の、強い味方になってくれるかもしれません。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年3月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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