「ブルーバックス」の誤解を解く“最軽量”の一冊

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ブルーバックス科学手帳 2017年度版

『ブルーバックス科学手帳 2017年度版』

著者
ブルーバックス編集部 [編集]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784062204897
発売日
2017/02/15
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

最軽量のこれで誤解を解いて!

[レビュアー] 小飼弾

 日本で3番目に創刊された老舗新書なのに新書扱いされていない新書レーベル、ブルーバックス。同レーベルより古いのは岩波(1938年)、中公(1962年)のみで、何と同じ講談社の現代新書(1964年)より先に発足しているにもかかわらず、多くの本屋で新書コーナーではなく科学書コーナーにおいてある。鬼子扱いを嘆くべきなのか。別格扱いを寿ぐべきなのか。

 同レーベルには別格扱いされるだけの価値がある。何しろ自然科学分野ノーベル賞受賞者が、同賞を受賞した業績について、同賞を受賞する前(ここ重要!)に著した著書が複数あるのだ。南部陽一郎の『クォーク』に小柴昌俊の『ニュートリノ天文学の誕生』。今や科学新書はブルーバックスの独壇場ではなくサイエンス・アイ新書やPHPサイエンス・ワールド新書もあるし、一般新書も決して自然科学をハブっているわけではなく、老舗の岩波はブルーバックス創刊前に遠山啓『数学入門』を出しているし、新参の幻冬舎にも大栗博司『重力とは何か』があるが、「科学といえばブルーバックス」を覆すだけの著者層の質量をもつレーベルはまだなく、これからもないのではないか。

 しかしそれが敷居の高さとして書店にさえ認識されているのだとしたら残念にもほどがある。物理的にも内容的にも最軽量の『ブルーバックス科学手帳 2017年度版』(ブルーバックス編集部編)から誤解を解いてほしい。書棚ではなくカバンにしのばせて。

新潮社 週刊新潮
2017年3月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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