“小さすぎて失敗すらできない”ことを習慣化することが、やがて大きな結果につながる

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小さな習慣

『小さな習慣』

著者
スティーヴン・ガイズ [著]/田口 未和 [訳]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478065778
発売日
2017/04/27
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

“小さすぎて失敗すらできない”ことを習慣化することが、やがて大きな結果につながる

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

小さな習慣とは、毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動です。“小さすぎて失敗すらできない”ものなので、気軽に取り組むことができ、それでいてびっくりするほど効果があるため、新しい習慣を身につけるには最適な方法といえます。(「はじめに」より)

小さな習慣』(スティーヴン・ガイズ著、田口未和訳、ダイヤモンド社)の冒頭には、このように記載されています。それどころか、小さな習慣を使えば、人生を大きく変えるチャンスが高まるとすら著者はいうのです。

習慣が長続きしないのは自分自身に問題があるからだと考える人も多いでしょうが、本当はそうではなく、やり方が間違っているだけ。でも小さな習慣なら、罪悪感に悩まされることも、大きすぎる目標に怖気づくこともないということ。そして新しい習慣を長続きさせるには、自分の脳を味方につけることが大切。脳の働きをうまく利用すれば、一生の習慣を簡単に身につけられるというのです。

著者によれば本書の最終的な目標は、自分の生活に健康的な習慣を取り入れ、それを長く続けられるようにすること。そんな本書のなかから、きょうは第6章「大きな変化をもたらす『小さな習慣』8つのステップ」の要点をまとめてみましょう。

ステップ1:小さな習慣とプランを選ぶ

著者はまず、これから身につけたいと思う習慣をざっとリストにしてみることを勧めています。なぜならこれが、ステップ1を進めていくためのたたき台になるから。

大きな習慣に集中するのは、たしかにつらいでしょう。しかし小さな習慣なら、一度に複数の習慣に取り組むことが可能。意思の力はほとんど必要なく、プランに柔軟性があるからだといいます。

とはいえ、量が多くなると注意力が分散され、どれかひとつを怠ったり忘れたりしがちなので、一度に4つ以上の小さな習慣に取り組むことを著者は勧めていません。普通は、ふたつか3つの小さな習慣がちょうどいいそうです。

私が取り組んできた3つの小さな習慣は、大きな成功を収めました。運動を含めれば4つですが、これはすでに習慣として定着し、週に3回ジムに通っています。今も毎週、成果をチェックしてはいますが、もう抵抗を感じることはありません。私の脳は今では運動に対して抵抗するどころか、逆に励ますようになっています。(135ページより)

小さな習慣に関しては、“小さすぎる”は存在しないと著者はいいます。小さすぎて失敗するはずがない行動を毎日繰り返す、それがキーポイントだということです。(134ページより)

ステップ2:「なぜドリル」を使う

自分の選ぶ習慣が努力に値するのかどうか? そのことを知るいちばんの方法は、「なぜその習慣を選ぶのか、その理由を明らかにする」こと。そして、自分への問いかけのために重要なのが、「なぜドリル」を行うことなのだそうです。

ドリルの役割は、「掘り下げる」ということ。具体的には、取り組もうと思っている習慣をリストにしたら、「なぜそれを望んでいるのか」を考えてみる。シンプルな「なぜ?」の問いかけが、物事の核心まで掘り下げる優れた方法になるという考え方です。(150ページより)

なお、このドリルを役立てるには、正直に応えることが絶対条件。だからこそ、本当に深いところまで掘り進めることが大切だということ。(149ページより)

ステップ3:行動開始の合図を決める

小さな習慣の行動開始の合図で一般的なのは、時間ベースのものと行動ベースのもの。時間ベースの場合には、たとえば「私は月・水・金の午後3時にジムで運動する」と決める。行動ベースなら、「月・水・金の昼食を食べ終わってから30分後に、ジムへ運動しに行く」というように決めるわけです。

9時から午後5時までの仕事で、規則正しい生活を送っている人なら、時間ベースの合図が適しているそうです。仕事のスケジュールが柔軟な人は、行動ベースの合図を選ぶほうが、確実に習慣をこなせて、スケジュールも柔軟に保てることに。どちらを使うかは、望むライフスタイル次第だというわけです。(153ページより)

ステップ4:報酬プランを考える

著者によれば、自分の脳に褒美を与えることが大切。結果的にはそれが、小さな習慣を定着させてくれるというのです。

習慣づくりを、子どもに自転車の乗り方を教えるようなものと考えてみてください。最初は、抑えていてあげるから、と子どもを安心させて、ペダルを踏ませます。そして、どこかの時点であなたは手を離しますが、子どもは自分の力で走りだします。これと同じように、最初のうちは運動のあと、脳に付け足しの褒美を与えておきますが、やがて脳は満足感とエンドルフィンだけでも十分だと感じ、その行動を続けられるようになります。(173ページより)

もしも書くことを習慣にするのであれば、ワード数が増えたときに自分を褒めてみる。そして、たとえ最低限の目標を達成しただけであっても、身につけようとしている習慣はもっと多くの基礎になるのだと考える。そういう姿勢が大切。(169ページより)

ステップ5:すべてを書き留めておく

なにかをすぐに書き留めておくと、それを頭のなかにあるいろいろな考えの上位に位置づけることができるそうです。パソコンに打ち込んでもこれと同じ効果は得られないというのが、著者の考え。ひとつのアイデアを膨らませるには、手書きをする必要があるというのです。

ただし、スマートフォンを使いたいという人もいるはず。事実、どこにでも持ち運べるとか、目で見て視認しやすく、お知らせ機能も利用できるなど、スマートフォンのほうが優れている点もあるため、実際問題としては自分自身にとって使いやすい手段を選べばいいということ。(178ページより)

ステップ6:小さく考える

小さな習慣がすばらしいのは、失敗を恐れる必要がなく、罪の意識を感じずにすむこと。たとえ意思の力を使い果たしていても、やるべき課題は本当に小さなものなので、どうにでもやり遂げる方法を見つけられるというのです。

著者はどんなに意思の力が不足しているときでも、腕立て伏せを1回する、本を2ページ読む、50ワードの文章を書くという課題すらこなせないと思った日は1日としてないそうです。小さなステップは歩みを止めさせないということで、つまりそれが成功の秘訣。(188ページより)

ステップ7:スケジュールを着実にこなし、期待しすぎない

自分に高い期待をかけると、可能性が広がるもの。しかし「1日に12キロ走る」「3000ワードの文章を書く」といった種類の目標は、避けたほうが無難だといいます。

目標がいつの間にか大きくなってはいないでしょうか? 大きな目標は拒んでください。目標は小さなものに保ち、それを上回ればいいのですから。(197ページより)

どれだけ課題をこなすかに高い期待を持つ代わりに、継続することに期待とエネルギーを注ぐべきだという考え方。(195ページより)

ステップ8:習慣になる兆しを見逃さない

「抵抗感がなくなる(その行動をしないよりもするほうが簡単だと感じる)」

「一体感(その行動が体の一部になる)」

「無意識の行動(意識して決断を下さなくてもその行動をはじめる)

「不安がなくなる」

「日常化(ある行動が当たり前のものになれば、それは習慣)」

「退屈に感じる」

このような「習慣になる兆し」を見逃さないことも、小さな習慣を成功させるために大切だと著者は主張しています。(198ページより)

「小さな習慣は、大きな目標よりも優れている」と著者は主張します。小さな習慣という考え方は人生哲学でもあり、なにをするにもいちばん大事なのは最初の一歩だとも。いわば最初の一歩が、大きな目標の達成へとつながるということ。原点に立ち戻り、視野を広げるという意味においても、読んでおくべき価値がありそうです。

メディアジーン lifehacker
2017年5月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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