「日本人固有の悲劇」という通念を覆す

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「日本人固有の悲劇」という通念を覆す

[レビュアー] 図書新聞

 「一九四五年八月のソ連による対日参戦の結果、約六〇万の日本軍将兵及び一部文民がソ連・モンゴルに連行され、数年間、長くは一一年間も、日ソ国交回復まで各地の収容所で強制労働に就かされた」という辞書的定義を冒頭で記しながら、本書はそんな「日本人固有の悲劇」としての通念を覆す。序章では捕虜収容所は、スターリンが築き上げた矯正労働収容所がモデルであることを明らかにし、第一章では日本人よりも圧倒的に数の多かったドイツ軍捕虜の処遇について論じている。勝者と敗者に上下関係があるように、敗者の中にも上下関係が生まれる。後者のそれは過酷な状況を生き抜くための、生命を賭した剥き出しの存在を現出させる。戦争とは人を人でなくするものであることを、本書は伝えている。(12・25刊、二六二頁・本体八六〇円・中公新書)

図書新聞
2017年5月6日号(3302号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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