<東北の本棚>地産地消 先駆者の願い

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<東北の本棚>地産地消 先駆者の願い

[レビュアー] 河北新報

 本書のサブタイトルは「秋田発 地産地消運動の20年」。今ではどの自治体の施策にも見られる「地産地消」は、ほんの20年ほど前には新語の類いだった。著者はその言葉の漢字と意味を説明することから始め、秋田県内で1996年「地産地消を進める会」を発足。会代表そして行動する社会学者として、仲間とともに歩んだ20年間を記録した。
 会のスローガン「地元でとれるいいものを地元で食べよう」は、ごく当たり前で簡単に見えるが現代ではこれが難しい。地方都市でも、大量生産・大量消費の経済システムに完全に組み込まれているからだ。全国展開のスーパーが近所にあれば便利だが、そこには生産量が限られてコストを削れない地場野菜や加工品は陳列されない。著者らの活動は、まっとうなものづくりに取り組む生産者と、そんな生産者を応援したい消費者をつなぐ場づくりに集約される。
 秋田駅前の農家市場「あきた産デーフェア」。価格競争にあえぐ豆腐業界と組んだ食べ比べ会。日本酒と若者との出合いを演出する催し。それぞれの場は一過性の祭りではない。地域の食を大切にする意識がグローバリゼーションの暴風から地域を守り、地域自立の礎になるとの信念がある。
 行政、企業と対立した70年代の反公害運動などとは異なるしなやかな市民活動。創業世代の著者らはUターン、Iターンした志ある若者と連携し、蓄積した経験や人脈を資本とする企画が「お金を稼げる仕事」になる未来を展望する。新たな成果を盛り込んだ続編が書かれることを願う。
 著者は1956年東京都生まれ。秋田県立大地域連携・研究推進センター教授。
 無明舎出版018(832)5680=1728円。

河北新報
2017年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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