七人七色の密室短編アンソロジー
[レビュアー] 図書新聞
飛鳥高、鮎川哲也、泡坂妻夫、折原一、陳舜臣、山村正夫、山村美紗の七人七色の密室短編を集めたアンソロジー。「密室」ほど、ミステリファンを色めき立たせる言葉はない。しかも揃いも揃った名手が、短編でその醍醐味を味わわせてくれるのだから、至福の読書が約束されているようなものだ。白眉は、陳舜臣『梨の花』である。歴史小説のイメージが強いが、デビューは一九六一年に江戸川乱歩賞を受賞した『枯草の根』。七〇年には『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』で日本推理作家協会賞を受賞している。ある大学の文化史研究所で事件が起きる。そこで資料調べをしていた男性が、何者かに襲撃され重傷を負ってしまったのだ。現場は密室。謎の解明に「文化史研究」を絡ませる構成が実に見事な一作。(10・15刊、三三六頁・本体六二〇円・実業之日本社文庫)