明文堂書店石川松任店「今、読むべき社会派&本格ミステリの傑作!」【書店員レビュー】

レビュー

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リーマン、教祖に挑む

『リーマン、教祖に挑む』

著者
天祢涼 [著]
出版社
双葉社
ISBN
9784575520316
発売日
2017/09/13
価格
840円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「今、読むべき社会派&本格ミステリの傑作!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

《「ルールを厳守するべきか、多少の違反は認めるべきか。ここで話して結論が出ることではないわ。ただ、あなたと藤原禅祐の間には、埋められない溝があるようね。これは現状を肯定する勝ち組と、ひっくり返そうとする負け組、両極にある価値観の戦いなのかもしれない」》

 大企業スザクのセレモニー事業部で働く早乙女六三志は転勤早々に上司から、新宗教団体《ゆかり》の存在によって、プレニード(生前契約葬儀)の解約の可能性が出てきたことを知らされる。上司のように新宗教に偏見を持ってはいなかったものの、上司に《ゆかり》を潰すことを命じられた六三志は、《ゆかり》の実態がどうであれ実際に教祖と会う必要があると考える。《ゆかり》の教祖、藤原禅祐と会ったことにより、六三志は彼の企みを知ることになる。そして禅祐との話し合いの末、二人はある賭けをすることになる。宗教法人化か解散か、を賭けた二人の対決が始まる……。

 決して新宗教(宗教学の分野では新興宗教ではなく、新宗教と言うらしい)を悪、新宗教と敵対する側を善という安易な勧善懲悪の構図は取らず、両方の立場を丁寧に描きながら、絶妙なバランスで物語は進んでいきます。そして多数の違和感を忍ばせた物語は、やがて驚愕の結末を迎えるのですが、その驚きとともに浮かび上がる社会への強いメッセージが印象的です。今、読むべき社会派&本格ミステリの傑作と言えるかもしれません。

 新宗教をテーマにしたミステリと言うと、(必ずしもそうではないとはいえ)陰鬱な展開になりやすいイメージがあります。しかし本書は登場人物のやり取りなどにコミカルが滲み出ていて、このタイプの話を苦手にしている人にもお薦めしたい作品です。そしてこの作品で扱われているテーマのひとつに《世代間の問題》があり、多くの世代に向けられた本書を、老若男女問わず多くの人に読んでもらいたいなと思います。

トーハン e-hon
2017年10月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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