自分自身の「弱さ」を認められるリーダーは、部下の能力を活かすことができる

レビュー

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「弱い」リーダーが最強のチームをつくる

『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』

著者
嶋津良智 [著]
出版社
ぱる出版
ISBN
9784827210569
発売日
2018/03/19
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

自分自身の「弱さ」を認められるリーダーは、部下の能力を活かすことができる

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

一般的に、リーダーに求められるべき要素として多くの人がイメージするのは、部下をぐいぐいと牽引していくような力強さではないでしょうか。ところが『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』(嶋津良智著、ぱる出版)の著者は、違った考え方をしているようです。

私は仕事柄多くのリーダーと会ってきましたが、次のような悩みを抱えているリーダーは本当に多くいます。

「私にはずば抜けた能力もなければ、人をぐいぐい引っ張っていくカリスマ性もありません。指示や決断をするたびに『これでベストだったのか』と迷い、反発や批判を受けるたびに『私は間違っているのか』と心が折れそうになります。私はリーダーの資質に乏しいのかもしれません」

はっきり言います。こういう一見「弱い」人こそリーダーに向いています。(「はじめに」より)

ずば抜けた能力がなくても、凡人であるからこそ、メンバーの気持ちに寄り添うことができる。カリスマ性があると特権的な地位に踏ん反り返ってしまいがちなので、一般のリーダーにはむしろ害になる。

つまりは、そのように考えているということ。それどころか「強い」リーダーとは、己の能力を過信し、反省する力、客観的に自分を見る力に欠けたリーダーでしかないと言い切っています。

これまでに30000人以上のリーダー育成に携わってきた、リーダー育成の第一人者。トップセールスマンとしての実績を軸に、2005年には次世代リーダーを育成することを目的とした教育機関『リーダーズアカデミー 』を設立。業績向上のために生み出した独自プログラム『上司学』も好評で、2013年には一般社団法人日本リーダーズ学会を設立しています。つまり本書においては、自身の経験を軸として、独自のリーダー論を展開しているわけです。

ただし誤解すべきでないのは、著者はここで「リーダーは弱くていい」と主張しているわけではないということ。


自分の弱さを「認める」ことと、自分の弱さに「居直る」ことは違います。私も、自分の弱さを認めていますが、そこにあぐらをかいているわけではありません。「弱くても、生き残るための方法」を常に考え、本書にも惜しみなく盛り込みました。(「はじめに」より)

基本的な考え方がまとめられた第1章「【超原則】『弱さ』を補いあうチームは爆発的に伸びる」から、いくつかのポイントを抜き出してみましょう。


「弱さ」を隠すチームが背負う致命的リスク

24歳からリーダーとなった著者は性格も社交的だそうですが、それでも自分自身のことを非常に弱い生き物だと思っているのだとか。仕事においてもプライベートにおいても、問題に直面するたびにそう実感するというのです。

しかし人間は誰しも、弱い部分を持っているもの。リーダーである以上、あるいはリーダーを目指しているのなら、弱い自分を認めることには大きな意味があるとも主張しています。理由は、次の2点。

1. 成長願望が生まれる

弱い自分を認められるからこそ、「今より、少しでも強く生きられるようになろう」と努力できます。矛盾するようですが、「自分の弱さを認め、自分をより良い状態に持っていこう」とアクションを起こせる人は、強い人間だと私は思います。(23ページより)

だからこそ、「弱さ」を隠すことは「弱さ」を克服することではないのだといいます。大切なのは、「弱さ」をオープンにしたうえで、その弱点をどうカバーするか。逆にいえば、自分の弱点をさらすことができないリーダーは、自分やチームの成長の機会を奪い取っているということになるわけです。

2. メンバーの弱点を「個性」とみなせる

自分の弱さを受け入れられる人は、他人の弱さを受け入れられます。

Aさんは○○に適しているけれど、気が弱い部分がある。

Bさんは根本的には強い人間だが、△△のことになると途端に力を発揮できなくなる。

Cさんは命令されたことをきちんと遂行するが、自分の考えを主張することができない。

というように、それぞれの人にそれぞれの強みがあり、それぞれの弱みがあるもの。それは当然のことですし、大切なのは、チームメンバー一人一人の弱点を「個性」と捉え、各人がそれぞれの弱みを補い合うことです。

(25ページより)

チームには、メンバーの弱点を補うことのできる人が必ずいるもの。そして弱点を補ってもらった人もまた、別のシチュエーションにおいては誰かの弱みを補うことになるのだといいます。

そして弱点を補い合うことは、お互いの「違い」を認め合うこと。チームのメンバーからは、「自分にないなにか」を学ぶことができるわけです。そして同じように自分自身も、チームの誰かに対して、その人にはないオリジナリティを投げかけることが可能だということ。

そうやってお互いに欠けている考え方や価値観、好みなどをシェアすることができれば、メンバーひとりひとりの視野が広がり、チームが強くなっていくという考え方。

ただし注意すべきは、「弱いから仕方ないだろう」と開きなおり、自分の弱さを正当化すること。たとえば遅刻魔のメンバーが「人間だからしょうがない」と開きなおったとしたら、チーム運営に悪影響を及ぼしてしまうことになります。弱さを認めるということと、ルール違反・マナー違反を許すこととは別。正すべきところは正したうえで、人の弱さを受け入れられるリーダーが、最高のチームをつくるというわけです。(22ページより)

反対意見が出ないのは、リーダーが「裸の王様」だから

リーダーは、自分を叱ってくれるメンバーを重宝しなければならないと著者はいいます。

偉くなればなるほど、年齢を重ねれば重ねるほど、その人の周囲からは「叱ってくれる人」が減っていくもの。しかしそんな状態が続けば、リーダーは「客観性」を維持しづらくなるでしょう。

人間は弱いものなので、ときには耳の痛い意見も言ってもらわないと、己を見つめなおすことが困難になります。誰かに叱ってもらえて初めて、自分の行いに修正を加え、フラットな状態を保てるのです。リーダーといっても、結局のところはただの人。叱られて初めて成長できるわけです。

だからこそ、リーダーとしてやってはいけないのが、自分に意見を言ってくるメンバーを遠ざけたり、排斥したりすること。こういうことをしてしまうと、周囲はイエスマンだけになり、リーダーのことを思って苦言を呈してくれる人がいなくなってしまうからです。

たとえば、社内で自分の意見がすんなりと通るようなら赤信号です。ある意見に対し反対意見があるのは当然。それがないということは、「何か言うとにらまれるから」「上に逆らったらおしまい」という雰囲気をリーダーであるあなたが作っているのでしょう。決してあなたの意見が正しいと思っているわけではありません。(30ページより)

そんな「裸の王様」リーダーにならないためにも、自分にモノを言うメンバーがいたら、その人と真摯に向き合うことが重要。そうしてはじめて、自由な意見が飛び交う風通しのよいチームが生まれるということです。(27ページより)

嘘を責めたてる人は嘘をつく人より性悪

想像してください。あなたは営業部のリーダーです。成果がゼロだったメンバーの営業に「今日はちゃんとやったのか?」と聞くと、その営業マンは「はい、精一杯頑張りました」と答えました。あなたは自分の価値観からすると、「嘘だ」と思いましたが、どう反応しますか?

「バカヤロー」と怒鳴りますか? それとも、何も言わず見過ごしますか?

 ここで、怒るリーダーは二流です。嘘をついたことのない人間なんていません。あなただって仕事で嘘をついたことはあるはずです。「わたしは嘘などつかない」という人がいたら、それこそ大嘘つきです。(31ページより)

状況的に追い詰められている場合、人はついそれを嘘でごまかそうとするもの。もちろん、ごまかすことは悪いことですが、自己防衛は人間の本能でもあるわけです。つまり、「よい」「悪い」以前に、「人にはそういう弱い部分があるのだ」と理解すべきだというのです。

数字がモノをいうビジネスにおいて、大切なのは結果。最終的に結果さえ出せるのであれば、それ以前の些細な嘘はどうでもいい、とすらいえるという考え方。きょう嘘をついた人も、あす懸命に働いて結果を出すなら、それでOK。いわば嘘を大目に見ることもリーダーの役割であり、器の大きさだということです。

とはいえ、些細な嘘でも野放図にしてよいわけではありません。些細な嘘が続くようなら、「バレないと思ってる?」というように、深刻にならない程度に指摘するほうがよいということ。「このリーダーにつまらない嘘はつけない」というほどよい緊張感が、ポジティブな結果へとつながっていくわけです。

そのため、ときにはメンバーの嘘を大目に見る包容力と、決してダマされない観察眼、リーダーにはこの2つが求められるということです。(31ページより)

優秀なリーダーになるための方法を解説した書籍が次々と登場するのは、リーダーとしての資質を身につけられず、悩んでいる人が多いからなのかもしれません。そんななか、数ある関連書籍とは少し違う角度からリーダーのあり方を説いた本書は、なんらかの気づきを与えてくれる可能性があるといえるでしょう。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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