『太平山5000日』
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<東北の本棚>登山の奥深さをつづる
[レビュアー] 河北新報
秋田市にある太平山(1170メートル)に、昨年11月で80歳を迎えても登り続ける元高校教師がつづったエッセー集だ。山の楽しさや厳しさ、美しさを描く。
太平山は、秋田市・五城目町・上小阿仁村にまたがる太平山県立自然公園にある主峰。園内にはそのほか八つの峰がそびえる。
地形が急峻(きゅうしゅん)で大蛇がくねくねと横たわって見える太平山。1812年に登った江戸時代の紀行家菅江真澄は「おろちね」と呼んだ。動植物の生息を支える豊かな自然。太平山三吉神社奥宮が鎮座する山頂は、空気の澄んだ日には秋田県内の山々が一望できる。
著者が初めて太平山に登ったのは1958年、秋田大3年の時。広大なブナ林が重厚に息づいていたと記す。2001年からほぼ毎日入山するようになり、17年に5000日を達成した。本文最後に述べた「なによりも山に対して謙虚になること」との言葉に重みを感じる。
さまざまある登山道の中で比較的整備されていて登山者も多い「丸舞口」「野田口」ルート、太平山の歴史・文化、山日記なども紹介する。
著者は1937年由利本荘市生まれ。秋田山岳会元会長。日本山岳会会員。著書に「秋田の山登り50」など。
無明舎出版018(832)5680=1728円。