“エンタメ系新人賞”でダントツの知名度、「江戸川乱歩賞」〈トヨザキ社長のヤツザキ文学賞〉

レビュー

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QJKJQ

『QJKJQ』

著者
佐藤 究 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062202190
発売日
2016/08/09
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

“エンタメ系新人賞”でダントツの知名度、「江戸川乱歩賞」

[レビュアー] 豊崎由美(書評家・ライター)

 いわゆるエンターテインメント系公募型新人賞でダントツの知名度を誇るのが、一九五四年、日本推理作家協会によって設立された江戸川乱歩賞です。

 かつて乱歩賞の下読みをしていたことがあるんですけど、一千万円という高額賞金の効果もあってか、長篇を対象にした賞としては多数の応募があり、小説としての出来もしっかりしているというのがトヨザキの印象です。陳舜臣、西村京太郎、森村誠一、栗本薫、東野圭吾、桐野夏生、渡辺容子、池井戸潤など、後年、人気作家となる才能が輩出し、多くの作品が映画化やドラマ化されていることからも、授賞作品の打率が高い新人賞といえます。

 また、一度デビューした作家がこの賞に応募し直し、受賞によって才能を開花させるケースがあるのも、大きな特徴です。

 受賞のコツとしては選考委員がよく知らない世界を題材にすること。ホテル、将棋、病院、テレビ、銀行、プロレスなどなど、特殊業界ものといえる作品の受賞率が高いんです。作風としては、減点法に強い手堅いタイプ。舞城王太郎を世に送り出したメフィスト賞でなら評価されるかもしれない、突飛な設定や奇抜な文体を特徴とする作品は、なかなか受賞に至れないという結果が出ています。

 とはいえ、一昨年、第六十二回受賞作(第六十三回は受賞作なし)である、佐藤究『QJKJQ』は、家族全員がシリアルキラーというぶっ飛んだ設定の怪作にして快作。個人的には首藤瓜於『脳男』以来の、破格の乱歩賞受賞作と思われ、選考委員の面々に拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。ちなみに佐藤さんも、二〇〇四年に佐藤憲胤名義で書いた「サージウスの死神」で群像新人文学賞優秀作を受賞していて、今回が再デビュー。二作目の『Ank: a mirroring ape』で第二十回大藪春彦賞と、第三十九回吉川英治文学新人賞をとっていて、今後の活躍に目が離せません。

 さて、過日発表された第六十四回受賞作は、斎藤詠月の『到達不能極』(九月刊行予定)。奇抜路線は続くのか。はたまたいつもの無難路線に戻るのか。それは読んでのお楽しみです。

新潮社 週刊新潮
2018年7月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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