<東北の本棚>没後20年素顔を伝える

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<東北の本棚>没後20年素顔を伝える

[レビュアー] 河北新報

 「サイボーグ009」や「仮面ライダー」を筆頭に、数々の話題作で漫画界を先導した登米市出身の漫画家石ノ森章太郎さん(1938~98年)。その素顔を後世に伝えようと、没後20年と生誕80周年を機に出版された自伝的な作品集だ。
 44年間の漫画家生活で描いた770作の中から、著者自らが作中に登場する作品を選んで収録している。大成する前の青春時代や苦悩、創作に込めた思い、漫画への愛などを知ることができる。
 無名時代の赤塚不二夫さん(1935~2008年)や藤子不二雄(A)さんらと共に創作に励んだ東京都豊島区のアパート「トキワ荘」での青春の日々や、早世した姉との哀切な思い出など15作を386ページにわたって収めている。中でも敬愛する手塚治虫さん(1928~89年)との逸話は心に響いてくる。
 著者は若くして才能を発揮し、手塚さんの後押しもあって、佐沼高時代に「二級天使」でデビューした。高校卒業後に上京し、「トキワ荘」に住んだ。1986年に「マンガ日本経済入門」を発表し、200万部を超すベストセラーになった。
 多作でも知られ、描くスピードは他の漫画家よりも圧倒的に速かったという。ジャンルも多岐にわたり、豊かな才能を示した。
 三栄書房03(6897)4611=1080円。

河北新報
2019年1月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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