<東北の本棚>音感豊か独特のリズム

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さとうのつめあわせ

『さとうのつめあわせ』

著者
佐藤円 [著]
出版社
ポエムピース
ISBN
9784908827549
発売日
2019/05/25
価格
1,320円(税込)

<東北の本棚>音感豊か独特のリズム

[レビュアー] 河北新報

 同じ表題のシリーズ詩集を20代から10年ごとに刊行しており、3作目となる。前回30代の2作目で「カロリーオフ」としていた作品テイストは、一転して「まったりこってり黒糖風味」。40代になった作者が自らの存在をじっくり味わいつつ、音感豊かな独特のリズムで言葉を発する。
 本書は4章構成。第1章「まったりとゆったりと」の「日常」では<とりとめのない話をして/何気なく笑った/なんとなく食事をして/それとなく聞いた/さりげない時間は/思いがけない宝石>と穏やかな時間の貴さをかみしめる。
 第2章「ほどほどの苦みで」は東日本大震災後の混沌(こんとん)の中でつづった作品が続く。「何もしない休脳日」の<何も聴かず/何も見ず/何も話さず/何も書かず/全てのことが刺激になるので/しばらく脳を放っておく(後略)>という表現は被災地で暮らしてきた人に共通する感覚だろう。
 それでも自称「音声詩人」のテンポの良い言葉に感じられるのは前進力。仕事の傍らつぶやくような第3章「すっきりとした切れ味で」や朗読ライブの台本をまとめた第4章「こってりしたコクで」には悲しくも滑稽な人生の味がある。
 著者は1970年仙台市生まれ。fmいずみの番組でレギュラー番組を持つ。
 ポエムピース03(5913)9172=1296円。

河北新報
2019年6月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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