<東北の本棚>音感豊か独特のリズム
[レビュアー] 河北新報
同じ表題のシリーズ詩集を20代から10年ごとに刊行しており、3作目となる。前回30代の2作目で「カロリーオフ」としていた作品テイストは、一転して「まったりこってり黒糖風味」。40代になった作者が自らの存在をじっくり味わいつつ、音感豊かな独特のリズムで言葉を発する。
本書は4章構成。第1章「まったりとゆったりと」の「日常」では<とりとめのない話をして/何気なく笑った/なんとなく食事をして/それとなく聞いた/さりげない時間は/思いがけない宝石>と穏やかな時間の貴さをかみしめる。
第2章「ほどほどの苦みで」は東日本大震災後の混沌(こんとん)の中でつづった作品が続く。「何もしない休脳日」の<何も聴かず/何も見ず/何も話さず/何も書かず/全てのことが刺激になるので/しばらく脳を放っておく(後略)>という表現は被災地で暮らしてきた人に共通する感覚だろう。
それでも自称「音声詩人」のテンポの良い言葉に感じられるのは前進力。仕事の傍らつぶやくような第3章「すっきりとした切れ味で」や朗読ライブの台本をまとめた第4章「こってりしたコクで」には悲しくも滑稽な人生の味がある。
著者は1970年仙台市生まれ。fmいずみの番組でレギュラー番組を持つ。
ポエムピース03(5913)9172=1296円。