峰不二子、ボンドガール、そして紅子!?――『紅子』著者新刊エッセイ 北原真理

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紅子

『紅子』

著者
北原真理 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913113
発売日
2019/10/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

峰不二子、ボンドガール、そして紅子!?

[レビュアー] 北原真理(作家)

 オフィスのドアを突き破って美女が殴り込みをかけてきたらどうなるか。それがこの物語の骨子(テーマ)である。

 丸の内だろうが北京だろうが、会議中だろうがコピーをとっていようが、みんな結構、困るだろう。

 黄尚炎(ホアンシヤンイエン)は困った。

 おしかけてきた超ド級の美女・吉永紅子(よしながべにこ)、競合他社もとい敵国日本のお偉いさんの娘だったからである。それが仲間にしろと居座った。一緒にいるだけで国際紛争及び漢奸問題必至。何故なら時は一九四四年。日中戦争真只中。所は満州東南部。そして尚炎は民衆を匪賊や外敵から守る由緒正しき黄威(ホアンウエイ)の攬把(ボス)である。祖国を深く愛する中国人としては、如何(いか)に魅(ひ)かれる相手でも敵国日本の女性にはお引き取り願いたい。おまけにこの紅子、素手で熊を倒し狼狗(オオカミ)の群れを蹴散らす。結局、尚炎は紅子と闘った。ついでに関東軍の黒磯少佐も巻き込まれて闘った。

 紅子は言う。私はもう、世の中に阿(おもね)らないし、自分が正しいと思ったことだけをやるって決めたのよ。

 紅子は命を懸けて信義を通す。財産もプライドも捨て、さらわれた中国人の子供達を助け出そうと驀進(ばくしん)する。

 初めて書いた小説の主人公が実はこの紅子の原点である。どん底の惨めだった自分を励ますために、少しでも人生の明るい面を見るために、私は清く明るく美しい主人公(ヒロイン)に夢を託した。我欲に走らぬ他者への愛は、いつかは報われ味方が現れる。浅薄なポピュリズムの極致とまた嗤(わら)われるだろうか。でも今も昔もそういうことが私にとっては大切だ。

 執筆にあたっては、当時の経済事情や中国語の発音、ヴァイオリンの演奏法など、沢山の方達に教えていただいた。本当に、感謝の念で一杯である。

 太感謝你了! 多亏了你。

PS 紅子は峰不二子やボンドガールよりも×××です!

光文社 小説宝石
2019年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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