『図書室』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『劇場』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【『図書室』(岸政彦著)刊行&『劇場』(又吉直樹著)文庫化記念対談後篇】会話から生まれる想像力
[文] 新潮社
男のダメさがよく書かれている
岸 『劇場』って、ダメな男の子の話でもありますね。経済的にも女性に頼ってて。僕がいま考えてる次の小説って、ジャズミュージシャンの話なんです。そこそこのミュージシャンの男が女の子と出会って……って『劇場』そのまんまなんですが(笑)。
又吉 昔からある、普遍的なものですから。
岸 永田君が劣等感から相手を傷つけてしまうという場面がよく出てきますが、決定的にダメだなと思ったのが、青山にキレる場面で、それがまたうまい。永田と沙希の関係が、僕らの基準で言えばDVに近いような状況になってくるなかで、青山が介入してくる。もう別れたらって沙希に言う。そこに永田がキレて、長文のメールを何通も送るのがすごくキモくて(笑)。でもこれが男の本質なんだと思う。同じく相談に乗ってる、沙希のバイト先の店長の男には怒りをぶつけないですから。だから結局、永田は女に甘えてるんですよ。自分の彼女に劣等感をぶつけて機嫌悪くなったり。男って機嫌悪くなって黙るでしょ(笑)。
又吉 かと思うと、自分に不都合があるとめっちゃしゃべったり。
岸 男のダメさが本当によく書かれていると思いました。ちなみに青山への逆ギレのメールを書いているときは、どんな気持ちだったんですか。
又吉 書いてるときは、永田になりきっていますね。でも一方、青山の返事を書いているときは、青山になりきって、こいつ最低やなって思いながら書いていました。平等に。それで、シーンを書き終えて読み直してみて、自分で笑いました(笑)。