純文学からSFまで! 毛色の異なる作家10人によるギャンブルがテーマの作品集

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  • 宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー
  • 悪党どものお楽しみ
  • 007/カジノ・ロワイヤル

書籍情報:openBD

純文学からSFまで! 毛色の異なる作家10人によるギャンブルがテーマの作品集

[レビュアー] 若林踏(書評家)

「ぼくたちは大なり小なり、日々、なんらかの博奕をして過ごしている」。これは『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』のまえがきにある言葉だ。本書はSF作家、宮内悠介が「博奕」をテーマに様々な作家に短編執筆を依頼し、編まれたアンソロジーである。まえがきで宮内自身が「なるべく接点の少ない、それも書いてくれるのが難しそうな人たち」にお願いをした、と言っているように、純文学からSFまでジャンルは多様。その中でもミステリの要素が強い二編を本稿ではご紹介しよう。

 一編目は法月綸太郎「負けた馬がみな貰う」だ。主人公は借金返済のために、シンクタンクが募集する奇妙なモニターに参加する。それは数週間ないし数か月の間、競馬で負け続けるよう努力しろ、というものだった。高報酬を得るために負け続ける方法を編み出す、という捻じれた展開と、何故このようなモニタリングを行うのか、という動機探しが魅力的な作品だ。

 二編目は梓崎優「獅子の町の夜」。シンガポールを舞台に、ある夫婦の関係にまつわる賭け事に巻き込まれた男の話を描く。さりげない描写が伏線として活きる、本格謎解きの風味が溢れた一編である。

 博奕に縁の深いミステリ、といえばパーシヴァル・ワイルド『悪党どものお楽しみ』(ちくま文庫、巴妙子訳)である。かつて賭博師だった農夫のビル・パームリーがギャンブル好きの友人に頼まれて、いかさま師たちのトリックを次々に見破る。洒脱なアイディアと軽妙なユーモアに富んだ、愉快な連作短編集だ。

 賭博とスパイ小説を意想外の形で絡めたのがイアン・フレミング『007/カジノ・ロワイヤル』(創元推理文庫、白石朗訳)である。ソ連の諜報機関「スメルシュ」に打撃を与えるため、ジェームズ・ボンドは組織の金を使い込んだル・シッフルをカジノで破産させる計画に加わる。賭け事を利用した諜報戦、という荒唐無稽な着想を、力業で描き切った所に本書の美点がある。派手なアクションよりも火花が散るバカラ対決に注目。

新潮社 週刊新潮
2020年3月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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