[本の森 ホラー・ミステリ]『大聖堂の殺人 ~The Books~』周木律/『終末少女 AXIA girls』古野まほろ/『ノースライト』横山秀夫/『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』宮内悠介編

レビュー

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  • 大聖堂の殺人 ~The Books~
  • 終末少女
  • ノースライト
  • 宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

書籍情報:版元ドットコム

[本の森 ホラー・ミステリ]『大聖堂の殺人 ~The Books~』周木律/『終末少女 AXIA girls』古野まほろ/『ノースライト』横山秀夫/『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』宮内悠介編

[レビュアー] 村上貴史(書評家)

 先日本欄で紹介した周木律の《堂》シリーズが完結したことを、まずは喜びたい。完結編となる第七作『大聖堂の殺人 ~The Books~』(講談社)は、北海道沖の孤島を舞台にした密室と連続殺人のミステリだ。容疑者はいるが、その人物は、ヘリポートが壊れて孤絶した島の密室状況の巨大な大聖堂で犯行に及ぶことは不可能だった。なにしろその人物は、海を百六十キロも隔てた襟裳岬にいたのだ……。いかにも《堂》シリーズらしい大きな謎だが、本書の探偵役が挑む謎は、これだけではない。数十年前に同じ島で発生した連続殺人事件――シリーズを通じて読者に提示され続けてきた謎だ――にも挑むのだ。果たしてすべての謎は解かれるのか。周木律の豪腕と繊細を是非ご賞味あれ。

 古野まほろ『終末少女 AXIA girls』(光文社)も孤島ミステリだが、こちらはこちらでまたとんでもない孤島だ。世界が無数の巨大な「口」に食い荒らされ、虚無に侵食されるなか、なんとか難を逃れた彼らが漂着したのが、その島だった。裸もしくは制服姿の“少女”が、一人また一人と漂着するその島で、新たな事件が勃発。バケモノが侵入したらしいのだ。それも少女に化けて……。バケモノを特定すべく、嘘をつけないという特性の彼らは必死に知恵を絞る。その論理構成は、まさに本格ミステリのそれであり絶品。読者への挑戦状も挿入されていて狂喜。そして真相の衝撃たるや。終盤のほんの数頁の説明を読んだ瞬間に、あんな記述やこんな記述が、そう、夥しい数の伏線に化けるのだ。痺れる。

 横山秀夫『ノースライト』(新潮社)は、夫婦の物語であり、親子の物語であり、家族の物語であり、そして家の物語である。

 信濃追分の「Y邸」は、一級建築士の青瀬を代表する一軒として高く評価された。だが、依頼主である吉野陶太とその家族は、その家には住まなかった。三千万円もかけて建てた家になぜ住まないのか。自信作であっただけに、青瀬はその真相を追い求めずにはいられなかった……。姿を消した吉野陶太とその家族、青瀬と別れた妻と妻の元にいる娘、青瀬の雇い主とその妻と息子、さらに青瀬と彼の両親、そうした人々の関係が、無人のY邸を糸口に見直されていく。静かながらも力強い物語である。しかも構成にスキも無駄もない。まさに横山秀夫の長篇小説であり、満足必至だ。

 宮内悠介編『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』(光文社)は、編者の依頼に応じて、冲方丁や山田正紀、桜庭一樹など九人の作家が博奕をテーマに書いた短篇を集めたアンソロジーで、宮内自身の作も収録されている。博奕という言葉から読者が想起するであろうイメージを、それぞれの作家が、ふわりと逸脱しているのが刺激的だ。見事に十通りの味を愉しめる。

新潮社 小説新潮
2019年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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