異例のシリーズものでの受賞! 小説現代長編新人賞〈奨励賞〉「Cocoon」著者・夏原エヰジインタビュー!!

インタビュー

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Cocoon3 幽世の祈り

『Cocoon3 幽世の祈り』

著者
夏原 エヰジ [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065186589
発売日
2020/02/27
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

異例のシリーズものでの受賞! 小説現代長編新人賞〈奨励賞〉「Cocoon」著者・夏原エヰジインタビュー!!

[文] カドブン

小説現代長編新人賞の奨励賞を、異例の「シリーズもの」として受賞した夏原エヰジさんの「Cocoon」。見目麗しい花魁が闇組織の頭領として、江戸に跋扈する「鬼」を退治するというスタイリッシュで現代的な設定の本作は、若い読者を中心に話題を呼んでいます。著者の夏原さんにお話を伺いました。

――本作の着想はどのようなところからでしょうか?

夏原:大学時代に松井今朝子先生の『吉原手引草』を読んで感銘を受け、吉原に興味を持つようになりました。吉原のことを大学の図書館などで調べながら、自分でも妄想を膨らませている内に、「鬼と戦う花魁」という、本作の核となる設定ができました。もしそんな花魁がいたら、カッコいいし、綺麗だろうな、と。

――その頃から、もう原型はあったのですね。

夏原:はい。ただ、いつか形にできたら楽しそうだな、とは思いながらも、実際に書いてみることはしませんでした。その後、就職活動で出版社を受けた際、面接でやりたい企画について話すことがあったのですが、ある面接官の方に「そんなにアイディアがあるなら自分で書いてみたら?」というようなことを言われ、そうか、書けば良いのか! と(笑)。それでも、まだ書くに至りませんでした。それから色々と職を経て、ある会社を退職した際、次の就職先も決まっておらず、何をしたいかも思いつかなかったんですね。そこでふと、その面接官の方の言葉を思い出しました。頭の中には(主人公の)瑠璃たちの物語がずっとあったので、ここまで時間に余裕があるのは人生で最後かもしれないし、いま書かなければ後悔すると思い、賞に応募しました。

夏原:シリーズもこれで三作目となり、物語のスケールも大きくなってきました。全五巻ということですが、応募の時点から、既にシリーズを通しての構想はあったのでしょうか?

夏原:一応はありましたね。もちろん、それからかなり変わってはいるのですが、主人公たちが誰と戦うことになるのか、といった大きな柱は決まっていました。新人賞の応募作でシリーズ化を想定したものを出してしまったのは、今考えるととても恥ずかしいのですが(笑)。

――吉原のどんなところに魅力を感じるのでしょうか。

夏原:吉原は、一見華やかに見えながらも、その裏には女性たちの悲しみや苦しみが渦巻いている世界だと思います。そのことを知ったとき、表の輝いている部分がさらに際立って見えました。闇があるからこそ光がより美しく見えるのだということが、すごく琴線に触れたんですね。本作はファンタジーの要素が大きいですが、遊女たちの苦しみや葛藤などの暗い部分も、きちんと書きたいと思っています。瑠璃が戦う「鬼」も、現世に恨みを抱えた存在ですし。

――書いていて筆が乗るのはどんなシーンでしょうか。

夏原:瑠璃にせよ、鬼にせよ、抑えこんでいた感情が溢れ出るシーンや、感情のボルテージが最高潮になるシーンは、私自身も前のめりになって書けますね。ギャグシーンも同じくらい筆が乗ります。苦手なのはバトルシーンです。

――バトルシーンはスピード感が素晴らしく、苦手とは意外です!

夏原:書くときは、頭の中に流れるアニメーションを文字に起こしていくようなイメージなのですが、はじめは一連の動作を長文で書いていて、なかなか上手くいかなかったんです。編集者の方から、短文で書いたほうが良いというアドバイスを受け、今のような書き方になりました。それでも、いまだに苦手意識はありますね。

――本作は、主人公が退治する「鬼」とは別に、陽気な「妖あやかし」たちも多く登場します。妖怪はお好きなのでしょうか?

夏原:好きですね。子どもの頃に『ゲゲゲの鬼太郎』を見ていたのが大きいと思います。本作でどんな妖を出すか考えるときも、水木しげる先生の『妖怪大図鑑』をだいぶ参考にして、能力とビジュアルのバランスでこの八体に絞りました。妖たちの瑠璃に対する歯に衣着せない物言いは、人間ではないからこそ許されている特権のような感じで、自由に書けて楽しいですね。お気に入りの妖は、髑髏がしゃどくろのがしゃです。

――「Cocoon」シリーズの後のご予定は?

夏原:伝奇ではない歴史モノや戦国モノ、大学が法学部だったので、弁護士を主人公にした現代が舞台の小説も書いてみたいです。

――最後に、二月二十七日に発売予定の『Cocoon3 幽世の祈り』の読みどころをお願いします。

夏原:いよいよ、敵組織の目的をはじめ、これまで出てきた謎の正体が明らかになっていきます。どうぞお楽しみください!

取材・文:編集部

KADOKAWA カドブン
2020年3月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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