『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』
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自然観察だけじゃない歴史や文化の厚み
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
未知の書き手を発見するのも読書生活のよろこびのひとつだが、多作の書き手をずっと追いかける楽しみはまた格別だ。わたしは盛口満を30年近く読みつづけてきた。日本で出会える生き物全般について、自ら接して体験したことを、細密なイラストとともに書く。千葉に生まれ、埼玉で教員生活をおくり、沖縄に移住。そのときどきの環境で観察対象を見つけ、ときに海外へも出かけていくスタイルだ。数十冊の著作をつうじて、著者についてかなりのことを知ってきたので、もう他人の気がしない。
今回の『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』は、ちょうど沖縄・奄美が「世界自然遺産」に登録されるこの機会に、沖縄の動植物の多様性を紹介する内容だ。子どもたちを引き連れて自然観察ツアーに出かけ、沖縄の動植物が生きている環境を見てまわるという設定で書かれている。
砂浜ではそこが人工ビーチかどうかを見分け、森に入れば食べられる植物をさがす。生きているものだけではなく、ジュゴンやカメやイノシシなどの骨も拾い、骨から推理できることを教えてくれる。「沖縄の動植物を大切に守ろう」という視点のみならず、地元の人たちがその生き物を何と呼び、どう扱ってきたか(利用法など)も伝えるから、歴史や文化の厚みが加わった知識になる。これはジュニア向け新書だが、いつか沖縄で島めぐりをしようと思っている大人におすすめしたい。親子で読むのもいいですね。