『河合隼雄 物語とたましい』
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『河合隼雄 物語とたましい』河合隼雄著
[レビュアー] 産経新聞社
日本人で初めてユング派精神分析家の資格を取得した心理療法の第一人者、河合隼雄(1928~2007年)。その知のエッセンスを伝える随想を収めている。
スイスの心理学者ユングは自ら意識できない心の深層、つまり「無意識」を重視した。著者が光を当てるのも、近代科学が切り捨てがちな偶然や夢、東西の神話といった物語の不思議な構造。「人間の心を対象とする限り、常に不可知なXとでも言うべき存在に、心を開いていなければならない」。分からないことを受けいれることが人間理解の第一歩となる。そんな逆説が平明に説き起こされていて、興味深い。(平凡社・1540円)