『最強脳』
- 著者
- アンデシュ・ハンセン [著]/久山 葉子 [訳]
- 出版社
- 新潮社
- ジャンル
- 自然科学/自然科学総記
- ISBN
- 9784106109300
- 発売日
- 2021/11/17
- 価格
- 990円(税込)
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「今年日本で一番売れた本」著者発、スマホ時代の脳のトリセツ
[レビュアー] 尾木直樹(教育評論家)
世界中の人が待ち望んでいた一冊――だと私は思いました。
著者ハンセンさんの前作『スマホ脳』は「今年日本で一番売れた本」だそうですが、だからというわけではありません。
この世界を覆い尽くしたパンデミックの中、多くの人たちが経済的に、精神的に困窮しています。ストレスに曝されているのは大人以上に子どもたちです。未来が見えず友達にも会えない。外で自由に遊ぶこともままならない。世界中の子どもたちが、強いストレスに曝されたのです。
ゲームやSNSといったデジタルの世界に逃避したくもなります。でもそこで傷ついている子どもたちも大勢いる……そんな状況に胸を痛めてきたひとりとして、私は声を大にして叫びたいのです。「この本を是非、親子で読んで下さい」と。
『スマホ脳』も素晴らしい一冊でした。狩猟採集時代から変わらない私たちの脳。一方で、進化を続けるデジタルの世界。そのギャップがどれだけ人間の脳に悪影響を及ぼしているのか冷静に指摘し、警鐘を鳴らしました。知り合いの若いお母さんなどは、巻末のアドバイスのページをコピーして持ち歩いていました。
本書では、「ではどうすればいいのか?」について、より詳しく書かれています。前作を読むには多少の読解力も必要だったでしょうが、本書の「わかりやすさ」は特筆に値します。
なにせ、言っていることは極めて単純明快。「運動が脳を鍛える」という一点だけですから。
しかもこれが、すとんと腑に落ちる。運動することでなぜ発想力が伸び、記憶力がよくなり、集中力が上がるのか、科学的にわかりやすく説明されている。実行すべきことも平易に書いてあり、内容も簡単です。
なにより素晴らしいのは、イヤな自分を好きになり、前向きになれる方法が書いてあること。自分自身がレベルアップでき、自信もつく。競争やスポーツが苦手なら速足で歩くのでもいいというのですから、気楽です。
今の子どもたちは、親からも学校からも見えない世界を生きています。スマホやタブレットやPCの向こうに「もう一つのリアルな世界」があるのです。だからこそ抱えるストレスがあり、それは時に、親にも学校にも知られることなく、悲劇にさえ発展する。これからの時代、ICT教育は必須ですが、子どもたちの脳と心も同時に守らなければならない。それを実現するための方法が示されているのです。
スマホとの付き合い方に悩むすべての親子、すべての現代人に強くおすすめします。