『蓬莱島余談』
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【気になる!】文庫 『蓬莱島余談 台湾・客船紀行集』
[レビュアー] 産経新聞社
随筆家、内田百閒(1889~1971年)の台湾紀行と船旅にまつわるエッセーが一冊にまとめられた。日本郵船嘱託だった百閒が台湾を訪れたのは日米開戦の2年前の昭和14年。戦後の「阿房列車」シリーズで、乗ることを目的とした鉄道旅の楽しみを世に知らしめるより前の話である。
百閒は台北から夜行列車で縦断。目的地の台南で下車せず南端の駅まで乗り継いでおり、すでに〝乗り鉄〟の素地があったようだ。優雅な船旅の様子も興味深い。台湾滞在中の話題が少ないが、その理由とみられるエピソードも収録。百閒ファンは読み逃せない。(内田百閒(ひゃっけん)著/中公文庫・990円)