<東北の本棚>リズム感のある偉人伝

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講談で知る宮城の人物

『講談で知る宮城の人物』

著者
村田琴之介 [著]
出版社
金港堂 出版部
ISBN
9784873981451
発売日
2021/12/24
価格
1,100円(税込)

<東北の本棚>リズム感のある偉人伝

[レビュアー] 河北新報

 仙台市生まれのアマチュア講談師の著者が、宮城県にゆかりがある人物について、講談を通して興味を持ってほしいと考えてまとめた一冊。仙台藩祖伊達政宗はもちろん、仙台が生んだ江戸時代の大横綱谷風梶之助、民本主義を唱えて大正デモクラシーをけん引した現大崎市出身の政治学者吉野作造ら10人の逸話などを講談調で記している。

 このうちの一人で、仙台藩校の養賢堂に学び、後に国内初の近代的国語辞典とされる「言海」を編さんした国語学者大槻文彦の項が興味深い。17年に及ぶ言葉選びは困難を極めたとし、「毎月の書籍代は(中略)30円。当時の1円は今の2万円ほどと申します(中略)気になる本があったらすぐに買えるように、今日の数十万円に当たる金をいつも懐に入れていた」と記す。

 歴史上の人物らの偉人伝には違いないが、リズム感のある文体のため読み疲れない。1964年の東京五輪、柔道の無差別級決勝で敗れた神永昭夫=仙台市出身=の項は、「先に現れし男アントン・ヘーシンク。身の丈2メートル。目方は120キロ。首は長く太く、肌は熟れたる桃のごとくピンクに染まり、はやる若駒のごとく畳の上に駆け上がった」といった具合。張り扇で釈台をたたく音が聞こえてくるようだ。(桜)
   ◇
 金港堂出版部022(397)7682=1100円。

河北新報
2022年3月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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