「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学 山里絹子著

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「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学

『「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学』

著者
山里 絹子 [著]
出版社
集英社
ジャンル
歴史・地理/歴史総記
ISBN
9784087212136
発売日
2022/04/15
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学 山里絹子著

[レビュアー] 与那原恵(ノンフィクション作家)

◆冷戦下 若者の夢と葛藤

 沖縄が米軍統治下(一九四五〜七二年)に置かれた時期、沖縄の若者を対象に、米国の大学で学ぶための奨学制度があった。米陸軍省が管轄し、沖縄統治機関の「琉球列島米国民政府」が実施。資金は米陸軍予算で賄われた。

 この「米留制度」は四九年に始まり、本土復帰の見通しが明らかになっていた七〇年が最後となる。「米留組」と呼ばれた沖縄出身の留学経験者の総数は千四十五人だった。

 本書は、米留制度を通して、複雑な政治状況にあった沖縄、さらには冷戦下の世界情勢の様相を浮かび上がらせる。また、沖縄の若者が米国留学を志した理由や留学体験について、著者は当事者に聞き取りを重ねた。それぞれの人生に及ぼしたもの、沖縄に与えた影響などを探っていく。

 米留制度設立の翌年、朝鮮戦争が勃発。米側は沖縄の永久統治を意図し、恒久的基地施設の建設、土地の強制収用を断行した。沖縄住民の不満は米軍施政全般への抵抗運動ともなるが、米側は統治を円滑に進めるためにも、経済復興を担う人物や親米的指導者の養成を目指したことが米留制度の背景にある。

 米留組への聞き取りにより、米側の思惑とは異なる留学生個々の姿が見えてくる。初期の留学生は思春期に沖縄戦を体験し、戦後は米軍基地内での仕事に従事した人もいた。留学を希望したのは、自らの人生を切り開いていきたいという思いからだった。のちの沖縄県知事・大田昌秀、英文学者の米須興文(こめすおきふみ)、経済界で活躍する人物などで、彼らの米国体験は多様だ。

 平等と民主主義をうたう豊かな国で展開される公民権運動や、先住民の現実なども目撃。帰沖後の彼らは、その体験も胸に歩み出すが、やがてベトナム戦争が激化。出撃基地と化した沖縄では反戦・反米を訴える声が高まった。沖縄住民の多くが苦境を強いられてきたこともあり、米留組を親米派のエリート集団だと批判する人々もいた。

 沖縄・米国・日本。その狭間(はざま)で葛藤しながら生きた若者たち。戦後沖縄の一面を伝えるライフストーリーだ。

(集英社新書・946円)

1978年生まれ。琉球大准教授・アメリカ研究。共著『島嶼地域科学という挑戦』など。

◆もう1冊

金城弘征著『金門クラブ もうひとつの沖縄戦後史』(ひるぎ社)

中日新聞 東京新聞
2022年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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