「憩いのお住まいに! 投資に絶対!」「第二の田園調布出現!」―。ベストセラー『下流社会』で知られ、郊外研究も手掛ける著者はある日、昭和30年代の郊外住宅地分譲チラシを大量に入手する。当時の東京は深刻な住宅難と地価高騰が続き、隣県では多くの中小業者が交通不便な農地や山林を無秩序に宅地化していた。チラシのあいまいな文言を基にこれらの住宅地を特定し、歴史をたどる。
戦後の住宅供給を支えたのはこうした無数の小分譲地で、その質は高級住宅地から土砂崩れが懸念される地区まで多様だった。住宅史の隙間を埋める好研究。(光文社新書・1056円)
-
2022年10月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです