『超圧縮 地球生物全史』
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「地球誕生」→「サピエンス絶滅」てんこ盛りをイッキ読みの爽快感
[レビュアー] 篠原知存(ライター)
地球に生物が誕生してから絶滅するまでの歴史を、ほんの300ページほどで語り通す異色の書だ。著者は科学雑誌「ネイチャー」の生物学シニアエディター。
卵は水から離れた環境に適応するための宇宙服のようなものだとか、恐竜が巨大化できたのは気嚢という冷却装置を備えていたからだとか、進化の機微や生命の不思議さについての知見がてんこ盛り。一章、いや数行で本が何冊も書けそうな中身の濃さで、まさに「超圧縮」。
こちらの知識が足りず初めて見る単語が続出するが、分厚い注釈を繰るのももどかしい。悠久のドラマに夢中になり、地球生物どうなるんだ!?と一気読みしてしまった。
時々挿入されるイラストがいい。気に入ったのはデボン紀のウミサソリ、ジェケロプテルス。ザリガニみたいなのが大昔もいたんだなぁ……と眺めていたら2・5メートルまで成長したって。怖すぎます。
が、そんな怪物たちも次々に絶滅する。白亜紀末に恐竜の世界が終わりを告げたのは知っていたが、さかのぼると三畳紀、ペルム紀、デボン紀、オルドビス紀にも大量絶滅が起きていて「ビッグファイブ」と呼ぶらしい。その前にもスノーボール・アース(全球凍結)とか、生物はしょっちゅう死に絶えてきた。
今後もいずれ地球環境が〈あらゆる生命にとって過酷なものになる〉のは動かぬ事実。気掛かりなのはその「第六の大量絶滅」がいつなのか。ホモ・サピエンスの活動がカウントダウンを早めているのは確かだ。地球温暖化、人口増加……。
だけど恐竜やウミサソリと違ってその事実を客観視できる私たちはダメージ軽減にも努めている。英国などでは一人当たりのエネルギー消費量は減少傾向に転じているそうだ。著者は〈やがて来る暗闇を前に、一族の運命を少しでも明るくしようとする、ちっちゃな動物の儚い努力〉と記す。沁みる言葉だった。