『おとな体験授業?』
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【児童書】『おとな体験授業?』なかがわちひろ作 ひねりのある物語
[レビュアー] 渡部圭介
どんなおとなになりたいかを話しあいましょう-。特別授業で先生からそう言われた子供たちはなりたい仕事、夢を紙に書き“魔法のランプ”に入れる。するとランプから湯気が出てきて子供たちは大人になり…。本書はそうして大人体験をする子供たちを描いた物語だが、ひねりがある。
漫画家を夢見るあすかはラーメン屋に、ラーメン屋になりたかったりゅうじは美容師に、といった具合に紙に書いた夢がランプの中でまぜこぜになったのだ。子供たちは自分の夢とは違う夢でも興味津々で、思ってもみなかったからこその冷静な視点で仕事の面白さや、大変さを率直な言葉で語る。
子供に戻り体験したことを語り合う場面で、獣医になる夢を抱いている、ゆりの表情が印象的だ。その大変さを体験した子から「期待していると がっかりするよ」と言われても、ゆりは笑顔。「いいおとな」になれたからだ。
さまざまな経験を重ねることの大切さを知り、「いいおとな」って何だろうとも考えさせられる。(アリス館・1650円)
渡部圭介