【児童書】『こども法医学』岩瀬博太郎著

■暮らし守る解剖医

殺人事件の解決や死亡事故の原因解明には、亡くなった人たちを解剖し、死因を究明することが欠かせない。将来、法医学を学んで遺体の解剖などに必要な知識を身に付ける若者が増えればと、解剖医の「ドクターいわせ」がイラストを交えながら事件や事故の捜査の舞台裏へといざなう。

一見すると普通の交通事故、でも死亡した運転手の血液を調べると薬物が検出されて－。「ドクターいわせの法医学事件簿」の章はサスペンスドラマのような話ばかり。徹底的に死因を探る人たちによって暴かれる悪事が世の中にはあり、法医学が私たちの暮らしを守っていると気付かされる。

著者は法医学を生死にかかわらず「すべての人の人権を守るための学問」と捉え、死因が分からない遺体はできるだけ全て解剖すべきだとして、それができていない日本の制度上の課題も取り上げている。大人にとっても学びが多い。子供には難解か…いや、読めば事件によく遭遇しては鮮やかに解決してみせるアニメの「名探偵」の視点に近づけるかも。（ライフサイエンス出版・１７６０円）

評・渡部圭介（文化部）

• 渡部圭介
• こども法医学
• 岩瀬博太郎
• ライフサイエンス出版

• 
• 
•