医者や専門家のことばをなぜ信じてしまうのか?脳の「権威効果」を使って営業を成功させる方法

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サイコロジーセールス最強の営業心理学

『サイコロジーセールス最強の営業心理学』

著者
大谷 侑暉 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866802251
発売日
2023/04/21
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

医者や専門家のことばをなぜ信じてしまうのか?脳の「権威効果」を使って営業を成功させる方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

営業職に就いている方であるなら、「どうすれば営業で成果を上げることができるのか」という問いを自身に投げかけた経験をお持ちのはず。

答えの出にくい問題ですが、心理学をこよなく愛しているという『サイコロジーセールス最強の営業心理学』(大谷侑暉 著、フォレスト出版)の著者は、営業で成果を上げる方法は、「人間の心を理解すること」だと断言しています。

なぜなら、人は心でモノを買うものだから。それは著者だけの意見ではなく、現代的な最先端の営業スタイルとしても、営業やマーケティングにおける世界の潮流としても、「心理を理解する」ことがいまもっとも大切だといわれているというのです。

本書が「営業×心理学」をテーマに設定しているのも、そんな理由があるから。具体的には、「サイコロジーセールス」という営業手法を明かしているそう。それは人間の持つ普遍的な認知傾向、心理傾向などを押さえつつ、営業の基本プロセスをたどりながら心理学を使う営業方法なのだといいます。

売れる営業マンとは、商材がすごいから売れているわけではなく、相手に「欲しい」「書いたい」「契約したい」「どうせ買うなら、この人からがいい」と思ってもらうことに成功しているから売れるのです。

言い換えれば、心理的に「買いたい」「買わせて欲しい」と思わせるプロこそが、一流の営業マンなのです。(「はじめに 営業で成果を上げるために」より)

つまり営業にとって大切なのは、顧客の心理を理解し、心理に合わせた営業を行なうこと。それさえできれば、商材が変わろうが、会社が変わろうが結果を出し続けられるというわけです。

なぜなら心理学は「心を扱う科学」だから。正しく扱いさえすれば、“売れる再現性の高い営業スキル”になるということ。正しい営業プロセスに従い、心理法則に基づく営業を行なうことで、どんな人でも驚くほど営業成績は上がっていくそうです。

こうした考え方に基づく本書の第1章「営業が押さえるべき6大心理法則」のなかから、きょうは「権威効果 専門家の意見は正しい、従いたいと感じる心理傾向」に注目してみたいと思います。

「権威効果」が働く理由

たとえば「弁護士だから彼の発言には間違いがない」というように、人は専門家の前では盲目的になってしまいがちです。著者によればそれは、脳のリソース(意志力/ウィルパワーなどと呼ばれています)を節約する手助けとなるから。

私たちは脳に存在するリソースを使って、計算、推論、思考、理解、決断などを行なっているといわれています。ただし、そのリソースは一日のなかで使用できる量が決まってもいます。

たとえば一日がんばって仕事をして帰宅したら、以後はなにもやる気にならなかったりするものです。そんなところからもわかるとおり、すべての物事に対して頭を使っていたら、すぐに脳内のリソースが枯渇してしまい、頭を充分に働かせられなくなってしまうのです。

しかし「権威効果」が働けば、脳のリソースを使わなくてよくなります。そのため、本当に必要なところに脳のリソースを割くことができるようになるわけです。(53ページより)

「権威効果」を営業に活用する方法

「権威効果」では、1.肩書き、2.モノ、3.服装の3つを意識すべきなのだそうです。それぞれを確認してみましょう。

1. 肩書き

肩書きとは、自分の職業や実績のこと。たとえば「××大学教授の○○です」「合計1000人の指導実績がある○○です」などといわれると、「すごい人なのでは?」と感じるのではないでしょうか? このことに関連し、ここでは大学の5つのクラスを対象に行なった実験の結果が紹介されています。

研究者たちは、「ケンブリッジ大学からある人物(仕掛け人)が来た」と、それぞれのクラスに紹介します。その際、それぞれのクラスには、その人物(仕掛け人)の肩書きを別々の形で紹介したのだそうです。

・学生として紹介(権威が低い)

・実験助手として紹介

・講師として紹介

・准教授として紹介

・教授として紹介(権威が高い)

(55ページより)

その後、5つのクラスの学生に対して彼の「身長」についての推測をしてもらったところ、地位が上がるごとに平均1.5センチずつ身長が高く評価されたのだとか。

「学生」として紹介された場合と「教授」として紹介された場合とでは、7.5センチも身長に差があったそうです。

私たちは、それなりの権威を持つ人に対して「身体が大きい」という印象を持っているものです。そのためこの実験でも、肩書きの力によって、相手に権威を感じさせることができたわけです。

2. モノ

権威のあるモノを持つだけで、顧客に権威を感じさせることができるそう。たとえばメガネ、スーツのバッジ、万年筆、高級バッグなどは、すべて権威効果を感じさせるアイテムだといえるわけです。

ジョージ・キャッスルダインの「見た目の印象はとても重要」という論文の中では、医者が聴診器を持つことは、必要不可欠だと述べています。

なぜなら、どんなに技術力のある医者でも、聴診器を持っていないだけで、信用されないなんてこともあるからです。(56〜57ページより)

3. 服装

権威効果を感じさせるには、当然ながら服装も非常に重要。

営業マンであれば、スーツにもこだわりましょう。いいスーツを着こなすだけでまったくの別人に生まれ変わることができます。特に、普段スーツを着ない顧客を相手にした場合、「スーツ=しっかりしている人」という印象を持っている人が多く、簡単に権威の渦に巻き込むことができます。(58ページより)

ところがスーツがほつれていたり、シワがあったりすると、だらしない印象につながるため権威が失墜してしまう可能性も。だからこそ、スーツを定期的にクリーニングに出すことを怠るべきではないのです。(54ページより)

サイコロジーセールスは単に顧客の心理を知るというものではなく、人間の認知傾向や心理傾向を理解しながら、営業を“仕組み化”していくことなのだと著者は述べています。したがって、本書を参考にしながら営業に心理学を取り入れれば、営業スキルをアップさせることができるかもしれません。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年5月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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