『K-POP現代史』
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100年の視点から分析した韓国アイドル史
[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)
山本浄邦『K-POP現代史』は、なぜBTSやTWICEなどのK-POPアイドルたちが、世界中で、特に音楽市場の中心の米国でヒットしたのかを、歴史的視点から分析している。19世紀後半から21世紀の今日まで、その視野は100年を超える。ポイントはだが一点だ。K-POPに至る韓国の大衆音楽は、その時々の政治や経済の状況と「闘う」ことで成立していった。最近では日本の嫌韓ブームの中でも、ネットを使ってアイドルとファンは「陣地戦」を戦い抜いた。ユーチューブなどを利用して世界でファンを獲得し、また時代と闘うメッセージ性があるためにK-POPは成功したのだという。
韓国大衆音楽史の俯瞰として読みやすく、また音楽を中心とした大衆による社会的風潮への闘争という視点はわかりやすい。政治色はないが、K-POP版の階級闘争史観にも似る。日本を世界への入り口として挑戦を繰り返していった積み重ねは、時々の日韓の交流と対立の歴史として、K-POPにあまり関心がない人にも興味深いだろう。
問題提起を少々。周りの理解を得られず、時には反発を招くような娯楽が、ネットを利用してサバイブしてきた事例は他にもある。しかしその多くは世界に繋がらない。K-POPだけがなぜ世界各地でヒットしたかは、おそらく各国のファン層の違いや、広告戦略への反応など需要側の事情をさらに検討すると良いのかもしれない。これは私の宿題でもある。