『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論 ――時代はガストロノミーツーリズム――』
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<書評>『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論 時代はガストロノミーツーリズム』柏原光太郎 著
[レビュアー] 長谷部浩(演劇評論家)
◆食を核に地方「圏」再構築
フーディとは何か。ひたすら美味(おい)しいものを求めて、世界中を旅する「食いしん坊」をいう。彼らにとっては、交通の不便も、高額な勘定も障害にはならない。SNSやグルメサイトの成熟によって、世界で共有される情報は膨大となった。著者は東日本大震災の折り、フェイスブックページで「飲食店を勝手に救済しよう!」を立ち上げ注目され、グルメ界をリードする有名人となった。
提唱するのは、食を核とした地方再生である。東京、京都ばかりではない。地方のレストラン、ホテル、オーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)を対象に観光地を点ではなく、面でとらえる。大軽井沢経済圏、北陸オーベルジュ構想、瀬戸内のラグジュアリーツーリズムを、具体的な店名、宿、観光資源を網羅し、提案している。県の境界にとらわれず、何度も訪れたくなる地方の「圏」を再構築するのが日本を再生する道だと説く。不可能を怖(おそ)れぬシェフや実業家。ひとりの突き抜けた存在が、大胆な改革には必須との考えに説得力がある。
(日刊現代発行・講談社発売・1870円)
1963年生まれ。日本ガストロノミー協会会長。
◆もう一冊
『食卓の情景』池波正太郎著(新潮文庫)