『おれに聞くの?』
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『おれに聞くの?』山下澄人著(平凡社)
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
自分にとって悩み相談は大事なコミュニケーションツールだから、誰かに悩みを相談するのも、誰かの悩みを聞くのも、誰かの悩みを読むのも好きだ。これまで数えきれないほど悩み相談の本を読んできたけれど、本書には他にない変な魅力がある。
まず、悩みへの回答がとてもやわらかい。寄り添うでも突き放すでもなく、ぐにゃぐにゃした言葉や考えを使い、相談者の悩みを一つ一つ分解する。そうして悩みからパーツを取り外していって、一体最後に何が残るか。何も残らなかったらさぞ恥ずかしいだろうなと思う。救われるより試される、ちょっと怖い悩み相談だ。
そして、相談者の真正面に立って答えているというより、相談者の真後ろに立って答えている感じがしてハッとする。相談者を気持ちよくさせる言葉はいくらでもあるけれど、決してそうならない。
「ビジネスのためミュージシャンなど異業種の人間が小説を書くことをどう思うか、小説を書く資格はそんな簡単でいいのか」という偏見に満ちた質問への回答も、実に痛快だった。