『隠れ家と広場』水島治郎著
[レビュアー] 産経新聞社
アンネ・フランク一家がナチス・ドイツの迫害を逃れて移り住んだオランダ・アムステルダム。この町では、歴史的にユダヤ人をはじめとする宗教的、政治的な少数派に比較的寛容な空間が形成されてきた。少数派の生存を許す「隠れ家」と、市民の一員として多数派と交流できる「広場」を兼ね備えた欧州有数の国際都市の近現代史を、同国政治史を専門とする政治学者がアンネ一家を軸に描く。
「寛容」なオランダだが、独占領下では多くのユダヤ人住民が犠牲になった。迫害の傍観者としての一般国民の罪を問う近年のオラ気になるンダでの歴史論争も紹介され、興味深い。(みすず書房・3960円)