『危険な関係』
- 著者
- 竹村 猛 [訳]/ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ [著]/角川書店装丁室 [著]
- 出版社
- KADOKAWA
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784042939016
- 発売日
- 2004/05/25
- 価格
- 858円(税込)
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8度も映画化された不朽の名作フランスにアメリカにヨン様も
[レビュアー] 吉川美代子(アナウンサー・京都産業大学客員教授)
1782年にフランスで発表された原作は、登場人物たちが交わした175通の手紙だけで構成された名作。他人の手紙を盗み見てしまったような罪悪感すら覚える。名うてのプレイボーイの子爵、プライドが高く美しい侯爵夫人の二人が仕掛ける巧妙な恋愛ゲームに巻き込まれるのは、貞淑な人妻、美しい処女、凛々しい騎士。最後に悲劇が起きるというスリリングな展開は銀幕にはぴったりで、8回も映画化された。
1959年のロジェ・ヴァディム監督作品は、フランス映画史に輝く天下の二枚目名優ジェラール・フィリップとジャンヌ・モロー主演で現代(製作当時)のパリ上流社会が舞台。フランスでは不道徳すぎるとして上映禁止となった問題作だ。小学生の時に劇場で観たが、何かよからぬ企みが進行していることは察した(笑)。再視聴ではモダンジャズとモノクロ画面の退廃的で危険な大人の心理劇を堪能。
’76 年に再びヴァディム監督が、原作に近い時代と貴族社会を舞台に撮ったのが『華麗な関係』。貞淑な人妻役が『エマニエル夫人』のシルビア・クリステルで、唇を半開きにした表情が貞淑に見えず、ミスキャスト。
’88 年のアメリカ映画は原作にほぼ忠実で出演者たちが原作のイメージに近い。侯爵夫人がグレン・クローズ、プレイボーイの子爵にジョン・マルコビッチ、貞淑な人妻にミシェル・ファイファー、騎士にキアヌ・リーヴスで、アカデミー賞脚色賞や美術賞などを受賞したお薦め映画。
’99 年の『クルーエル・インテンションズ』は、現代NYの名門私立校の高校生たちの話に大胆に変更。映画『ラストサマー』やドラマ『ゴシップガール』が好きだったら絶対ハマる。
韓国映画『スキャンダル』は、原作からは想像できないほどのエロス大作(さすが韓国映画!)。李朝末期の上流社会でのスキャンダラスな物語が華麗に官能的に描かれる。『冬ソナ』のペ・ヨンジュンが春画を描くのが趣味のプレイボーイ役で、ファンはショックかも。
どの映画もそれなりに面白いが、原作ほどの息詰まるような緊張感はない。時は経ても名作は色褪せない。