カズオ・イシグロという作家は題材や手法は違っても、常に同時代の問題を見つめてきた。ノーベル文学賞受賞後の第一作となった本書では、「AF(人工親友)」なる人工知能を搭載したロボットを語り手に据えて話題を呼んだ。
物語は、子供の成長を助けるAFとして作られた語り手のクララが、自分を購入する客を店頭で待つ場面から始まる。やがて病弱な少女と暮らすことになったクララは、彼女の家族や周囲の人々から感情を学ぶが…。少女とクララの交流を軸に、人間の心や愛について考えさせる哀切な一編。(ハヤカワepi文庫・1650円)
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2023年8月6日 掲載
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