『温かいテクノロジー 22世紀への知的冒険』林要著(ライツ社)

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温かいテクノロジー

『温かいテクノロジー』

著者
林 要 [著]/根津 孝太 [イラスト]
出版社
ライツ社
ジャンル
工学工業/工学・工学総記
ISBN
9784909044433
発売日
2023/05/19
価格
2,090円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『温かいテクノロジー 22世紀への知的冒険』林要著(ライツ社)

[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)

 ロボット掃除機ルンバが段差にひっかかりピクピクしていると、「しょうがないな」と抱きかかえ、ペットのように扱う。高齢の父親のそんな姿を見た宮部みゆきさんは2013年、SF短編「さよならの儀式」を書いた。「あんな円盤状のものにでも感情移入するなら、人に近いロボットが誕生してお世話してくれたら、別れはどうなるのか」、それを想像したという。

 Pepperの開発に参画した著者は、このヒト型ロボットがうまく動かないさまを応援する人々を見て、18年に家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を開発した。目が合う、声をかけると振り向く、抱き心地がいい。手間をかけると懐く。特徴はペットに似て、面倒をみる対象ができることで、自分が誰かに必要とされているという満足感が高まり、心を癒やす。高価だが、それが人気らしい。

 開発秘話を収めた本書は、人の労働を助け、生産性を高めるという従来型ロボットから発想を転換し、人の心をケアし、温かくするテクノロジーを構想する。なにより、ちょっとした発見を創造に結びつけるしぶとさに瞠目(どうもく)した。

読売新聞
2023年8月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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