中学受験に伴走したパパが書いた、最難関受験のリアル

エッセイ

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君とパパの片道列車

『君とパパの片道列車』

著者
灘中までの道 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784334100216
発売日
2023/08/23
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

中学受験に伴走したパパが書いた本

[レビュアー] 灘中までの道(サラリーマン)

 過熱する中学受験。そんなニュースを見ても、私には関係のないことだと思っていました。でもその波はついに、地方に住む我が家にまで押し寄せます。息子はいつの間にか中学受験の塾に入り、さらに私立中学の最難関である「灘中(なだちゅう)」を目指して電車で片道一時間以上もかかる遠くの校舎に通うことになり、私の生活は一変します。

「帰りは毎日、パパに迎えにきてもらって一緒に帰りたい」

 私は働き方を変えて時間を作り、息子と一緒に電車に乗ることになりました。

 中学受験の主役は小学生。それを支える親のサポートは「伴走」と呼ばれます。私はツイッターに「中受パパ」のアカウントを作り、自分の伴走の様子を毎日、投稿していました。そこには大きな反響があり、合格発表のツイートには百万件を超えるアクセスがありました。著書『君とパパの片道列車』は、その投稿を加筆修正し、受験日記としてまとめたものです。

 共働きで忙しい毎日。家のことはすべて妻がこなしてくれていました。毎朝、早起きしてお弁当を作る音が聞こえてきます。中学受験の伴走だけは、私がやらなくては。出発時間や宿題とテスト範囲の確認、お弁当の有無、塾の面談、学校説明会への参加。時間はいくらあっても足りません。私は働き方を大きく変え、息子に寄り添って中学受験のゴールを目指すことを決意しました。

 私は勉強を教えませんでした。でも一時間以上も電車に乗っていたおかげで、息子とたくさん話をして、抱きしめることができました。今でも電車に乗ると、息子の中学受験を思い出します。不安で苦しくて、何度も涙をこらえて。でもいつも幸せだったあの時間。

 家族の絆を深めた幸福な中学受験ドキュメント、『君とパパの片道列車』。ぜひ多くの方に読んで欲しい一冊です。

光文社 小説宝石
2023年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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