定年後どうする問題…「地方議員」になるという意外な選択肢があった!?

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60歳から地方議員になってみる

『60歳から地方議員になってみる』

著者
伊藤惇夫 [著]
出版社
世界書院
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784792795931
発売日
2023/04/19
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

地方議員は定年世代の大チャンス 議会は新鮮な“血”を求めている!

[レビュアー] 元官僚芸人まつもと(お笑い芸人)

「サラリーマンを定年退職したら、地方議員をやってみない?」なんて言ったら「何をバカなことを」と言われそう。でも、著者は地方議会にこそチャンスが隠れていると指摘する。

 私は「元官僚芸人まつもと」という芸名で活動するお笑い芸人だ。その名の通り、10年前に官僚を辞し、昨年44歳で芸人になった。周囲からは「何を考えてるの!」なんて叱られもしたけれど、私にとっては大きなチャンスだった。なぜなら、ほかに同じことをしている人がいないからである。こうして本誌に寄稿できているのは単なる官僚でも、芸人でもなく、「元官僚」の「芸人」だからこそ。同じことは、定年退職を経た地方議員にも当てはまると思う。

 と言っても「政治家はジバンとカバン、そしてカンバン。地盤も資金も知名度もないのになれるわけない」といった声が聞こえてきそうだ。確かに、国会議員や都道府県知事クラスならそうだろう。でも、舞台が市町村なら話は違う。

 私は地方自治を所掌する総務省のOBで、現役時代には地方議会の選挙結果を調べる機会が多かった。振り返れば、「定数17人の議会に立候補者が20人」といったケースは決して少なくなかった。今春の統一地方選挙では、全国373の町村議会選挙のうち、実に123の自治体が無投票当選。20の自治体は定数割れである。少子高齢化の影響で空き家や荒廃農地が増え、後継者不足で廃業が増えているのと同じ問題が地方議会でも生じている。

 この状況は、これから定年を迎える世代には大きなチャンスと言える。健康で多少の貯えがあり、現役時代に培ったノウハウや人脈も健在。それなら住民との距離が近い地方議員として、再び社会の一線で頑張れば良い。地域によっては60歳前後の議員なんてまだまだ“若手”のヒヨッ子だし、何より多くの地方議会は新鮮な外部の“血”を求めている。

 還暦を過ぎて、住み慣れた街や地域を離れることには不安や抵抗があるだろう。それなら、自身や配偶者の故郷へのUターンでも良いし、いまの住まいと議員を務める地方自治体を行き来したっていい。何か仕事を持っているなら複業も可能だ。

 著者は前書きで〈「キョウイク」(今日行くところがある)と「キョウヨウ」(今日用事がある)だけの時間潰しでいいのか?〉と訴える。定年後の地方議員という意外な選択肢は、多様でエキサイティングな第二の人生をもたらしてくれるかもしれない。

新潮社 週刊新潮
2023年9月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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