『世界の移民歴史図鑑』
- 著者
- フィリップ・パーカー [編集]/本村 凌二 [監修]/小林 朋則 [訳]
- 出版社
- 原書房
- ジャンル
- 文学/外国文学、その他
- ISBN
- 9784562072330
- 発売日
- 2023/04/21
- 価格
- 6,380円(税込)
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『世界の移民歴史図鑑』フィリップ・パーカー編(原書房)
[レビュアー] 小池寿子(美術史家・国学院大教授)
現代人の祖ホモ・サピエンスがアフリカ大陸を出てから5万年以上経(た)つという。以降、人類は地球上の生息可能な地域のほぼすべてに移住するようになった。移動は、気候変動や食料問題、民族間の抗争、政治体制の変動、交易、迫害そして難民など、自然環境の変化はもとより、関係性によって社会を営む人間固有のさまざまな要因による。
本書は最初期から、植民地化と征服、自由を求める大量移動、脱植民地化とディアスポラなどの章立てで、今なお留(とど)まることのない移動・移民のありさまをグラフィック、写真など多数のヴィジュアルで辿(たど)る。移動の坩堝(るつぼ)ユーラシア大陸はむろん、日本東洋も対象だ。人間の歴史は移動によってつくられてきたことがよくわかる。とくに、何世紀にもわたって故郷離脱を強いられた人々の姿は過酷な歴史の証人として胸に迫る。各テーマ冒頭の簡略な経路図も世界の広がりを効果的に伝えてくれる。
新たな移民問題が拡大し深刻化している今日、抜群のインパクトをもって人類は今、何をすべきか問いかける。本村凌二監修、小林朋則訳。