それって悩みすぎかも?いつも時間がない人に送る「ちょうどいい悩み方」

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「すぐ動く人」は悩まない!

『「すぐ動く人」は悩まない!』

著者
和田秀樹 [著]
出版社
祥伝社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784396318420
発売日
2023/09/08
価格
792円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

それって悩みすぎかも?いつも時間がない人に送る「ちょうどいい悩み方」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「すぐ動く人」は悩まない!』(和田秀樹 著、祥伝社黄金文庫)の著者が述べているとおり、「悩み」は心の病を抱える人だけの問題ではありません。悩んだことがない人はおらず、いま悩んでいない人であっても、いつ悩むことになるのかはわからないわけです。

ただし心の病を抱える人の多くは、悩みが度を越していたり、悩みから抜けにくかったり、悩むべき方向性を間違っていることが多いようです。そこで本書において著者は、精神科医としての観点に基づき「もうくよくよ悩まなくてよくなるためのヒント」をまとめているわけです。

実際、受験生を見ていて感じることですが、計画をつくるのに5時間かかって、勉強が5時間しかできない人と比べて、1時間で計画づくりを切り上げて、9時間勉強できる人のほうが成功の確率は高いものです。

要するに悩む時間が長ければ、仕事ができる時間、行動できる時間、勉強できる時間が減ってしまって、その分、ハッピーでない結果になることが多いわけです。(「はじめに」より)

たしかに、あれこれ悩んで綿密な計画を立てたとしても、予定どおりの結果にならないことは少なくありません。だとすれば早めに動き、その時々の結果を見ながら計画を修正していったほうが、最終的に得るものが多いということになるのでしょう。

実際、心の病を抱える人などに特に多い話ですが、頭の中で悩んでばかりいて、行動ができない人がとても多い気がします。(「はじめに」より)

つまり大切なのは、あまり役に立たない悩みにはまらずに、「どう動く方向に持っていけるか」を考えることなのです。そうした考え方に基づく本書のなかから、第2章「行動するだけで悩みは軽くなる」に焦点を当ててみましょう。

行動できないことで悩んでも仕方がない

多くの方が認識しているとおり、悩みには「解決できること」と「解決できないこと」があるものです。そして「変えられないこと」「変えようがないこと」は、解決できない悩み。

例を挙げるなら、過去のこと、容姿や出生(どんな親から生まれたか)、自律神経の問題によって起きている現象(人の前に出ると顔が赤くなる、胸がどきどきする)などは変えられるものではないため、いくら悩んでも解決できないわけです。

さらにもうひとつ、「動けないこと」も解決できない悩みといえるようです。たとえば転職について悩む際、なんとなく「この会社にいたくないなぁ」という程度の気持ちでいるのであれば、それは解決にいたらないはず。おそらく、その気分のまま会社に居続けることになるからです。

つまりそうした段階では、転職はその人にとってまだまだ漠然とした思いの域を出ていない空想的なことだということ。

そうしたケースでは、転職について悩んでも仕方がありません。それよりはその会社でどうポジションを上げるか、どうやって実力を認められるようになるか、といったことを悩んだほうがずっといいですよね。(58〜59ページより)

一方、もし心のなかで転職する決意が固まっているなら、悩みは解決に向けたものになることでしょう。 “転職先の候補をリストアップする”“ツテをあたる”“転職に有利になるようにスキルを身につける”など、そこには転職するための具体的な動きが伴うからです。

したがって、「変えられるか、変えられないか」「動けるか、動けないか」、これらは悩みを選別するための重要なポイントなのだと著者はいいます。悩みが心に入り込んできたとき、まずはこの二点でふるいにかける。そうすれば、余計な悩みにつかまらないですむということです。(58ページより)

ベストではなく、ベターをめざす

そもそも、「悩みを解決する」とはどういうことなのでしょうか?

悩んでいることがすっかりクリアになる、それが解決だと思っていないでしょうか。

もちろん、そうなることがベストです。しかし、そこにこだわっていると悩みは尽きないことになるのです。(60ページより)

仮に預貯金がゼロでお金がないことが悩みだったとすれば、生活を切り詰めるとか、もっと給料のいい会社に移るとか、アルバイトをするなど、お金を貯めるためにさまざまな動きをすることでしょう。

その結果、なんとか100万円の貯蓄ができたとします。しかし残念ながら、それで悩みが解決するというわけではありません。その時点で必ず、「100万円では貯蓄があるとはいえない。もっと貯めなければ。……どうすればいいんだ」というように、新たな悩みに直面することになるからです。

ある目標が達成されても、それでは満足できず、次なる目標が悩みになるのです。

この構図には際限がありません。どこまでいってもベストとは思えないからです。これはもう、人間の“性(さが)”あるいは“業(ごう)”といってもいいかもしれません。

そこで必要になるのが、「ベターでよし」とする感覚です。(59ページより)

上記の例でいえば、ゼロだった貯蓄が100万円になったことは、明らかにベターな状況が生まれたということになるはず。そこで、「いいじゃないか」と受け止める。そのように“ベター”を基準とすれば、悩みは“一応の解決”につながるのです。

そして、次は“100万円が110万円になるベターな状況”をつくるために努力する。そうしたことを繰り返していけば、状況はどんどん好転していくわけです。

ベターをもってよしとする。ベターを一応の解決とする。その姿勢がなやみをずっと軽くしてくれるのです。(63ページより)

たしかにそう考えて物事に臨めば、悩む機会は減っていくかもしれません。(60ページより)

日々さまざまな人と関わりながら仕事をしていれば、悩む機会は訪れるもの。しかし重要なのは、悩んでいる間にすぐ動くこと。そんな、忘れがちではあるけれど重要なことを再確認させてくれる本書は、円滑に日々を送っていくうえで大きく役立ってくれることでしょう。

Source: 祥伝社黄金文庫

メディアジーン lifehacker
2023年9月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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