『源氏物語を楽しむための王朝貴族入門』
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『源氏物語を楽しむための王朝貴族入門』繁田信一著
[レビュアー] 産経新聞社
平安貴族の仕事や暮らしぶりを解説。光源氏の母・桐壺更衣(きりつぼのこうい)は、史実の更衣(天皇の妻の呼称)と異なり天皇の寵愛(ちょうあい)を得て格が上の女御(にょうご=同)並みに扱われている。このことから、桐壺更衣が後宮で嫌がらせを受けた理由は、他の妻たちの嫉妬心だけではなく後宮の秩序を乱したことだという。
また、光源氏の傍らにいて汚れ仕事を引き受ける供人(ともびと)・惟光(これみつ)は、現代の読者には下っ端だと思われがちだ。だが物語の中で「朝臣(あそん)」と呼ばれており、実は五位以上の位階を持つ貴族だそう。紫式部が描いた宮廷を史実の王朝社会に照らし合わせると、物語をより深く味わえる。(吉川弘文館・1870円)