じつは自由な宗教だった!「イスラム教」への大きな誤解あれこれ

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イスラムと仲よくなれる本

『イスラムと仲よくなれる本』

著者
森田ルクレール優子 [著]
出版社
秀和システム
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784798070636
発売日
2023/11/10
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

じつは自由な宗教だった!「イスラム教」への大きな誤解あれこれ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

イスラムと仲よくなれる本』(森田ルクレール優子 著、秀和システム)の著者は、20年ほど前にエジプト旅行をした際、人々が道端で礼拝している姿に感銘を受け、帰国後イスラム教に入信したという人物。

現在はパリで子育てを続けながら、イスラム教のシンプルライフを広める専門家として活動しているのだそうです。

ちなみに日本に帰国するたび、イスラムについてさまざまな思いが頭をよぎるようで、たとえば次のように述べてもいます。

「イスラム教ってどんな宗教なの?」と聞かれることも多く、他国に住んでいて長年イスラムに接していた方や、お仕事関係にイスラム教徒がいる方、さらには「子どもの友だちにイスラムの子がいる」という形でも、じつはイスラムについて「知らない」ということに気づかされました。(「はじめに」より)

少なくとも日本において、イスラム教はまだまだ遠く、なじみがない宗教なのでしょう。しかし、いまや外国人と交流する機会が劇的に増えている時代。つまり、もう「イスラムのことを知らなくても平気」とはいっていられない段階に入っているわけです。

だからこそ、本書が書かれたということ。

この本は、もしみなさんのとなりの席にイスラムの子が座るようになっても、すぐに話しかけられて、その日のうちに仲よくなれますように、という願いをこめて書きました。(「はじめに」より)

この記述からもわかるように、本書では小学生でも読める簡易な文章によって、なかなか知る機会の少ないイスラムの基礎知識を解説しているわけです。しかし当然のことながら、大人にとっても有用な内容になっています。

きょうは、第4章「イスラムの大誤解、パパとママに教えてあげよう」のなかから2つのトピックスを抜き出してみたいと思います。

じつのところ、かなり自由な宗教だった!

イスラム教には、「あれもダメ、これもダメ」というように、なにかと規制の多い宗教というイメージがあるかもしれません。しかし、じつのところあらゆる宗教のなかでも非常にゆるく、自由がある宗教がイスラム教なのだそうです。

そもそも、「自由」とはなんでしょう? なんでも好き放題にできることでしょうか? それとも、やりたいと思ったことがなんでもできることでしょうか?

著者もムスリマ(女性のイスラム教徒)になる前は、少なからずそのように思っていたといいます。しかし人間は、「なんでも好き放題にできる自由」にはなれないものでもあります。

たとえばいい例が、食べることや寝ること。人間である以上はそれらから解放されることはなく、「食べも寝もせずに自由に毎日、好き放題やっていく」ことはできないわけです。

イスラムでいう自由とは「選択ができる」ということです。

じつはイスラムでは「宗教に強制があってはならない」とされています。

強制があってはならないので「自分で決めて、自分でおこなう」のです。

イスラムでは、1400年以上前から「〇〇をしなさい!」と強制的に言っておこなわせても、人間は続かないということを教えてきたのです。

ですから、神様アッラーを信じていながら、お酒を飲む人もいますし、お祈りをしない人もいるのです。(125ページより)

「豚肉を食べられないし、お酒も飲めない。女性だったら髪の毛を見せられないし、お祈りだって義務なのでは? だとすれば、まったく自由がないではないか」と思う方もいるでしょう。

が、それはアッラーからの「よりよい人生を送りたいなら、こうしたほうがいいよ」というアドバイスにすぎないということです。

だからこそ、「実行する」か「実行しない」かは自分次第なのだという考え方。

イスラムに、どこか強制的なイメージがあるのは、よいことと悪いこと、実行すべきことや、してはいけないことなどについて明確さがあるからではないかと著者は述べています。

それらは、命、知能、次世代、財産、宗教の5つを守ることを目的にした教えで、決して強制的ではなく、自由に決められるというのです。(124ページより)

イスラムの人って勧誘したりしないの?

宗教には多少なりとも、「勧誘してくる」というイメージがあるもの。

しかしムスリム(イスラム教徒)は、決して宗教勧誘をしないのだそうです。いうまでもなくその理由は、前述したように「宗教に強制があってはならない」から。

人は自分が納得したことで行動する生き物なので、イスラムでは「気持ちが伴っているか」を重要視しているというのです。

そんな考え方に基づいて現在のサウジアラビアから始まった宗教が、強制することなく1400年もの間に日本まで訪れたわけです。現在は、世界の1/4の人々がムスリムなのだそうです。

またイスラムでは、弱みにつけこんでの勧誘も、もちろんありません。

さらに、たとえ納得して入信してからも、だれかにお金をせがまれたり、カルト宗教のように高いお金をはらわされたり、怪しい壺などを買わされることはありません。

お金を寄付することはありますが、それは自分の意志で貧しい方や、こまった方々へ送るお金です。(142〜143ページより)

先進国では少子化が進む反面、ムスリムは増え続けているようです。著者の住むフランスでも、アフリカのモロッコやアルジェリア系移民のほかに、生粋のフランス人がキリスト教から改宗しているケースが増えているというのです。若い人も増えているといいます。

しかも、2100年には世界人口の1/3がムスリムになり、キリスト教を上回っていちばん信者が多い宗教になるといわれているのだそうです。

だとすれば、実際に自分が入信するか否かは別問題だとしても、少なくともその存在を認める必要性はあるのではないでしょうか? そんな柔軟性も、すっかり浸透した感のある「多様性」のひとつに違いないのですから。(140ページより)

さまざまな人と交流ができると、視野が広がって人生も豊かになるはず。そういう意味でも、イスラム教徒と仲よくなることには意味がありそうです。だからこそ気持ちをフラットにしたうえで、本書を活用したいところです。

Source: 秀和システム

メディアジーン lifehacker
2023年11月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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