「ドラゴン・タトゥーの女」は原作も面白い!アナウンサー・吉川美代子が語る映画と原作の魅力

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ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 上

『ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 上』

著者
スティーグ・ラーソン [著]/ヘレンハルメ 美穂 [訳]/岩澤 雅利 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784151792519
発売日
2011/09/08
価格
880円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 下

『ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 下』

著者
スティーグ・ラーソン [著]/ヘレンハルメ 美穂 [訳]/岩澤 雅利 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784151792526
発売日
2011/09/08
価格
880円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

孤高かつ“異様”な天才ハッカーが辣腕記者と難事件に挑む会心作!

[レビュアー] 吉川美代子(アナウンサー・京都産業大学客員教授)

 スウェーデン発のミステリー『ミレニアム』シリーズの記念すべき第一作『ドラゴン・タトゥーの女』を読んだ時の興奮は今も忘れられない(本国で’05年、日本では’08年出版)。孤高の天才ハッカー、リスベット・サランデルが鮮烈なデビューを飾ったのだ。表向きはセキュリティー会社の調査員だが、リスベットのハッカーとしての腕は超ド級。そして重い過去を背負っているらしい。彼女が雑誌「ミレニアム」の発行責任者でジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストと組んで、40年前の未解決少女失踪事件の真相を追う。同じく未解決の連続猟奇殺人事件も絡み、謎は深まっていくのだが……。

 映画化は2回。’09年のスウェーデン映画は英国アカデミー賞外国語映画賞受賞。リスベットを演じたのはノオミ・ラパス。原作でのリスベットは「首、腕、足首にタトゥー。背中には大きなドラゴンのタトゥー。髪は漆黒に染めて短く刈り、鼻と眉にはピアス。24歳だが14歳くらいにしか見えないほど小柄で華奢。頬骨は高く東洋人のような顔立ち。感情を一切表に出さず無表情」。画面に現れたラパスはまるでこの役のために生まれたとしか思えないほど完璧なリスベットだった。彼女は映画の成功で有名女優の仲間入りを果たした。

’11年のアメリカ映画の監督は数々の話題作を手掛けてきたデヴィッド・フィンチャー。テンポと緊迫感溢れる作品だ。ミカエルにダニエル・クレイグ、リスベットにルーニー・マーラ。スウェーデン版で強烈な印象を残したラパスと比べても遜色ないほど無表情でぶっ飛んだリスベットになったマーラ。ミカエルに淡い恋心を抱き始めたリスベットが僅かに見せる切ない表情がたまらない。映画は2本とも観て損はない。見比べて楽しんで!

 作者ラーソンはシリーズ3部作を書いて急死。ダヴィド・ラーゲルクランツが執筆を引き継ぎ、リスベットが凄絶な過去に決着をつけた6作目でシリーズは完結。だが、世界中の「ミレニアム」ファンはシリーズ再開を信じて待っている。リスベットの魅力に取りつかれたら抜け出せないのだ。覚悟して本書を読むべし!

新潮社 週刊新潮
2023年12月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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