『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』
- 著者
- ソニア・リュボミアスキー [著]
- 出版社
- 日本実業出版社
- ジャンル
- 哲学・宗教・心理学/心理(学)
- ISBN
- 9784534060686
- 発売日
- 2023/12/15
- 価格
- 1,870円(税込)
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「意欲」をもって行動すれば、すべてがよくなるという研究結果
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣 「人はどうしたら幸せになるか」を科学的に研究してわかったこと』(ソニア・リュボミアスキー 著、金井真弓 訳、渡辺誠 監修、日本実業出版社)2012年に刊行された同名書籍の新装版。
著者はスタンフォード大学博士課程の学生を経て、カリフォルニア大学リバーサイド校の教授として30年近く、「幸せ」についての研究に携わってきた人物です。その過程において、その研究が「ポジティブ心理学」と呼ばれるムーヴメントの一部として成長するさまを見てきたのだとか。
「ポジティブ心理学」とは、「人生を生きる価値のあるものにしているのは何か?」を研究する心理学です。
「ポジティブ心理学」という名称は、ポジティブな心の状態を育てるーー最も実りのある、できるだけ幸福な人生を送ることーーために、人を力づけることが必要だという考え方から生まれました。
ポジティブな心の状態を育てるのは、従来の心理学が専念していた、弱さを治すことや病的な状態を治癒することと同じくらい重要です。(「まえがき」より)
ポジティブ心理学の領域では、幸福感を得て持続させる方法、人生をより充実した生産的で楽しいものにする方法に関する、多くの発見がなされているそう。しかしそれらは科学者の間だけにしか広まらないものであり、専門家以外の人の手が届かないところにあるようです。
そこで本書において著者は、「いまよりももっと幸せになる方法」についての発見をまとめて紹介しているのです。重要なポイントは、そうした発見を学術的にではなく、「人が幸せになり、いつまでも幸せでいるために使えるスキル」として伝えている点。つまり、あくまで実践的なアプローチがなされているわけです。
きょうはPART3「意図的な行動が『習慣』として続く5つのコツ」のなかから、「動機・努力・コミットメント」に焦点を当ててみたいと思います。
「意欲をもって全力を尽くすこと」の素晴らしさ
著者は、「意欲のある人間のほうが幸せになり、いっそう成功するかどうか?」ということについて、協力者を得ながら実験したことがあるのだそうです。
たとえばある実験では、幸福度を高めたい人を募集すると明言し、「あなたは幸せになりたいですか? これこそが、そんなあなたのための実験です」と参加者を募り、一般的な心理学の実験に参加した人と比較したというのです。
その結果は特筆すべきものでした。定期的に「感謝の手紙」を書くことを求められた場合も、「最高の自分像」についての記録をつけることを指示された場合も、意欲のある参加者の幸福度は目覚ましく高くなったのです。一方、意欲がなかった参加者の幸福度はわずかに高くなっただけか、変わらないかでした。(361ページより)
また、「幸福」に関する他の実験においても、感謝を示すことや楽観的になることを参加者に実践してもらったところ、同様の結果が出たのだといいます。
つまりここからわかるのは、なにかをしようという意欲があればあるほど、人はそのために努力をするものだということ。
ちなみに「意欲」のあった参加者は、実験が終わったあとも幸福度が高まるための行動をとり続け、自分の人生に取り入れ、長期的にその恩恵を手にする傾向が見られたそうです。
ここからは、努力も挑戦もせず、目的もなければ、失敗やためらいがあるだけだということがわかります。(360ページより)
忙しすぎるときはどうしたらいい?
「私はストレスが多くて、1日をどうにか乗り切ることしか考えられないのよ」
私が「幸せになるための行動習慣をいくつか試してみたら」とすすめたとき、あまり幸せそうでない知人がこういいました。確かに彼女はとても多忙でした。(中略)私は共感しました。
でも、人生における重要事項に関わることだとしたら、忙しすぎるからと見すごしてしまうでしょうか?(362ページより)
おそらく、そんなことはないはず。だいいち、幸せになるための行動の大半は、わざわざそのために時間をつくらなければならないものではありません。それは、「自分の人生をどう生きるか」という方法にすぎないのです。
新たな視点で仕事に臨んでみたり、なにかにくよくよ悩んでいることに気づいたら気持ちをそらしてみたり、「幸福度が高まる行動習慣」はさまざま。
しかもそうした方法の大半は時間を奪うものではなく、ていねいに選びさえすれば、幾らか努力することで人生にうまく溶け込むだろうと著者は述べています。(362ページより)
もし、あと戻りしてしまったら……
やる気が失せたり、やろうと思っていたことを忘れたり、実行しようと決意したことや「幸福度が高まる行動習慣」をやりそびれてしまったり…。現実問題として、そういうことは誰にでも起こりうるものです。完璧な人間なのいないのですから、むしろ普通のことだともいえるかもしれません。
また、感謝の念を持たない、人を許せない、自己中心的になる、悲観的になる、心に傷を負う、無気力になる、優柔不断になるなどについても同じことがあてはまるはず。「ネガティブ感情」がついてまわる状況は多く、そういった感情はすぐに反応を引き起こす働きがあるわけです。
いずれにしてもみなさんに覚えておいていただきたいのは、「幸福度が高まる行動習慣」に取り組み続ける意欲をなくしたり、実際にやめてしまったりしても、救いようがない状況だと感じないでほしいことです。(364ページより)
なぜなら人生は、ときに複雑であり、邪魔が入りやすいものだから。取り組んだ方法が適切でなかったことも考えられるでしょうし、友人からのさらなる励ましが必要だったというケースもあるでしょう。
いずれにしてもそこであきらめず、もう一度、意欲をかき立て、また正しい軌道に乗ってみればいいのです。
「最適なタイミングと変化」「強力な社会的支援」、そして「ひたむきに努力する」ことの3つが正しく組み合わされば、たいていの人には効果があると研究結果によって裏づけられています。(365ページより)
これは、心にとどめておく価値のある重要なポイントことかもしれません。(363ページより)
私たちの誰もが、それぞれのやり方で幸せになれる可能性を持っているのだと著者は強調しています。日常生活で幸福度が高まる基本的な行動は、自分で思っているほど手ごわいものではないとも。だからこそ、ぜひとも本書を参考にしながらよりよい未来を目指したいものです。
Source: 日本実業出版社