『財政・金融政策の転換点』
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経済停滞脱出への新陳代謝とは?
[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)
日本経済は90年代からデフレ(物価下落)を伴う深刻な停滞に直面してきた。今日ではデフレではなくインフレ(物価高)が問題であり、またそれなりにGDPも拡大してきている。だが厳しく見定めればまだ日本はデフレ停滞の中にあるといっていい。もちろんこの30年余りの間に、デフレ停滞を脱するためにさまざまな対策が講じられ、また時に苛烈な経済政策論争が繰り広げられてきた。
飯田泰之『財政・金融政策の転換点』は、このデフレ停滞に別れを告げるひとつの解答を提示している。そのキーワードは「高圧経済」だ。いままでの不況や停滞への対策は、財政政策か、あるいは金融政策に偏ったものだった。だが「高圧経済」では、財政政策と金融政策を両方ともに意欲的にやることが必要だ。
日本は財政危機であるとマスコミは喧伝するし、膨大な政府債務もある。だが、経済停滞を脱するためには、国債を発行して積極的な財政政策を行うことがベストだ。同時に金融緩和も大胆に行う。さらに「高圧経済」のポイントは、停滞を脱した後も積極的な財政・金融政策をやめずに、「人手不足」や成長分野への資源移動をもたらすように経済をやや過熱気味に維持することだ。そうすることで経済の新陳代謝をうながす。
もちろん新陳代謝はデフレ停滞の中で安住していた旧世代にはつらいものになるだろう。新旧世代の対立が深刻化するかもしれない。その点への目配りも本書はするどい。